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道化師の提案

「ふむ」

その日、ヴァイス=シュヴァルツはいかせのごれ高校の近辺にいた。つい先ほど白波 シドウと出くわし、何とかやり過ごして逃げて来た所である。
彼が見ているのは、とある女子生徒。

「……やれやれ、また動く気ですか。あまり派手なことをされては、ワタシの楽しみが減ってしまうではありませんか」

海海とかいうらしいその女子は、自身因縁の火波 スザクに狙いを定めているらしい。借りを返す前に彼女が死んでは、大いに困る。あくまでも、彼女を壊すのは自分でなければ。

「行きますか」

先手を打つに越したことはない。思い立ったが吉日と、黒ずくめは地面を蹴ろうとして、

「……待てよ……うむ、これで行きましょう。うまくすると、あの鬱陶しい男にも掣肘をかけられるかも……」

それよりももっといいことを、思いついて足を止めた。




「!」

帰り道。海女海 海海は、路地からふらりと現れたその男に気付いて、足を止めた。その風貌には見覚えがあった。
シン・シーを襲った、黒ずくめのシナリオライター。

「ヴァイス=シュヴァルツ、だっけ?」
「さすがにご存じですか。その通りです」

手を出す気はなかった。彼はあくまでもその時の都合でシンと戦ったに過ぎず、また人間でもあるからだ。
ただ、向こうから攻撃して来るならばやむを得なかった。
この時ばかりは杞憂に終わったが。

「構える必要はありません。実は、ちょっとお話がありまして」
「話?」

そうです、と「白い闇」は嗤う。

「アナタが狙いを定めている火波 スザクですが……彼女には、校外にも多くの仲間がいます。彼女個人を狙う方法では、どうやっても外部から介入がありますよ。その力とて、リスクもなしに連発出来る程安いものではないでしょう」
「! どうして、これのことを?」
「ほほう、やはり事実でしたか。さすがに半信半疑でしたが」

カマをかけられた。それに気付いたのも一瞬、ヴァイスは続ける。

「ともかく……そんなわけですから、ワタシの力を貸そうというのですよ。彼女にはワタシも因縁がありましてね」
「へぇ……そう言う事なら、ありがたく手を借りるとするよ」
「それはどうも。具体的な方法ですがね、簡単な事ですよ」
「それは?」

暗闇、と形容すべき嗤いと共に、脚本家は言う。

「彼女には、何にも変えられない友人がいます。あくまで、もし、ですが……彼女を盾に取られれば、火波 スザクはおろか、仲間も何も出来ません」
「……それは、ちょっと無理。その友達も人外なら乗ったところだけど、人間みたいだし」
「ですから、そちらはワタシがやるのですよ。ちなみに彼女の家ですが、以前アナタのお兄さんが取り逃した人外の少女と、妖狐がいます。つまり、人外を匿っているということです。家の場所はお兄さんが知っているでしょう」
「! それは……それは。何とも好都合だね」
「ワタシとしても、いい加減縁を切りたい相手ですのでね。まあ、利害の一致というやつですよ。よければ、夜波君とアナタのお兄さんも呼べば面白くなりそうですが」

含み笑い。

「それで、どうします? 断るなら、この場でワタシの記憶を消して頂いて構いませんが」
「…………そうだね。この話――――」

答えは―――――。



道化師の提案

(あくまでも自分のために)
(男は「罰」に知恵を貸した)
(彼女の出した答えは――――)

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最終更新:2011年08月08日 16:35