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白い闇の動向

「……ふむ」

樹の上。下の気配が遠ざかるのを待ち、ヴァイスは身体を起こし、「彼女」の背を見送った。

「……断られましたか。ま、いいでしょう」

彼女の力によって消えたはずの記憶が、そこには確かにあった。いや、正確に言うと頭の中ではない。
右眼の義眼に、邂逅からの一部始終が記録されていたのだ。

海海の言うとおり、ヴァイスは己のことだけを考えている。それだけに必然、自身が関わる事に関しては万全の備えをしている。見たもの、聞いた事を記録する義眼も、その一つだ。
だから、彼はその一件を思い出す事が出来た。とはいえ、その反動で頭痛が酷いし、義眼も調子がおかしい。こんな無茶は金輪際御免だ。


「……頭が痛いですねぇ」


とはいえ、だ。
断られたことがわかった時点で、彼はこの件に関わる気をすっかりなくしていた。ダメでもともとの思いつきだったこともあるし、この結果も想定の内。

「ま、簡単に行くとは思いませんが」

強力な能力と言うものは、どこかに必ず付け入る隙がある。完全無欠の力と言うものは、存在しえない。
そして、スザクには不思議な運がある。どんな危機的状況も、水際で何とかしてしまう。今度もそうかは知らないが。

「……自分のことしか考えない、ですか。いいでしょう。ならば、あくまでも自分のために行動するとしましょうか」

この件から手を引く前に、ヴァイスは一つだけ、事態を動かすために、手にもならない手を打つことにした。携帯を開く。今朝出くわしたあの男に、発信者非通知・本文なしでメールを送る。
そのタイトルは……。


白い闇の動向

(その報せを受け取った男の行動は……?)

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最終更新:2011年08月08日 16:35