休日の昼間。由衣は早めに食事をとり、カウンターにいる亜音の元へと向かった。
丁度一番客が少ない時間だ。店には誰もいない。
「店長、さっき
ミナミさんから連絡はいったのきいたか?」
「きいたよ。別人格に支配されそう、ねぇ…。」
由衣は向かい側のカウンター席に座りながら訊いた。
「ただ単に封印するだけじゃだめなのか?」
「本人の精神次第っていう問題はあるわね。難しいところだけど、精神関連の能力者を探すしかないか。」
亜音が溜め息を吐くと、由衣はぴんと何かを思い浮かべた。
「…あのさ、
ノルンじゃ駄目なのか?」
「乃流?どうしてまた?」
「『変幻自在』だよ。あいつ、確かホウオウグループの能力者の力を使えたはずだろ?」
「あ、そうか。もしかしたらそういった能力系統を持ってるかもしれない。」
「あいつ、簡単なものなら能力単体でも使えたらしいし、頼めるかもしれねぇ。」
「分かった。乃流に頼んでみることにしてみよう。」
「できるだけ他人には言わないようにしてるけど、こればかりは仕方ないだろうな…。」
「まぁ、乃流だから絶対口外はしないよ。」
由衣は勢いよく立ち上がり、携帯を取り出した。
「よし、店長、ミナミがバイトしてるとこの電話番号教えてくれ。商工会で知ってるんだろ?」
「良く知ってるね、あんたは…;もしかして情報収集強い?」
「へ?いや、そんなことはないと思うが…?」
同刻、ミナミからの連絡を受けた春美達も話し合っていた。
機密事項なのでこちらはテレパシーのみでの会話だ。
『別人格でありマスか…。いまいちそう言ったものにはピンと来ないのでありマスが…。』
(皆いろいろあるから、簡単に呼び出せないだろうし…。)
『やはりここは
ヨシエさんあたりに頼むしか…。』
(でも、いつもここでお仕事してもらってるのに、休暇じゃないんだから…。)
でもミナミちゃんの頼みだし、断るわけにもなぁと春美は頬杖をついた。
(
シン・シーの一件もあるし、心配事は多いし…。)
『…あ、そうか、それでありマス!』
キリが思いついたように言った。春美はそちらを向く。
(キリ君、なにか思いついたの?)
『
カイムさんでありマス。封印が排除された今、「音」と「言葉」の全てを掌握している。ならば…。』
そこまで言われ、春美も察した。
(そっか!精神能力者じゃないけど、間接的に心理に働いて進行をとどめたり遅らせたりができる!)
『それに、逢魔ヶ刻の暴走の原因の一つとして、能力を極度に使わなかったことに寄る反動がある。ここで彼に能力を使わせれば、彼自身の暴走の進行も遅らせることができるのでありマス。』
(そうだね。分かった。ミナミちゃんに頼んで、昼間に訪問しよう。)
春美は立ち上がり、カイムの部屋へと向かった。
「カイムさん、調子はどう?」
「ええ、大丈夫です。まだ昼間にまで影響はありません。」
「よかった。なら、ちょっとだけつきあって?」
「え?あ、はい、構いませんが。」
「近いうちに、ちょっとお仕事に出てほしいの。」
最終更新:2011年08月09日 00:19