『いつも人が多いなあ~』
ホームの屋根から見下ろす
黒井さん。
学生、子供連れ、会社員、旅行中の人―――色んな人がいる。
『今日は…何もしなくていいや』
黒井さんは屋根にごろんと寝転がる。
特にゲームしたい気分でもないし、途中下車の旅は別に行きたい所は無い。
たまにはこんな風に日向ぼっこして、のほほんと過ごすのもありかも。
『……襲ってこないよね~』
いつだったかは忘れたけど、噂の『正義の味方』が黒井さんを殺しに来た。
その人は、ゲームで捨てられた黒井さんを見つければ、存在も消えるだろうと考えてたみたいだけど、黒井さんは都市伝説から生まれた妖怪。
だから負けても姿をくらますだけ。
こうして黒井さんは正義の味方から逃れた………本当は死んでもいいけどね。
だって、黒井さんは勝手に生まれたから。
別に家族も友達もいないし。
存在しているから、なんとなく、存在しているだけ。
人間は、誰かの為に生きていて、誰かに望まれている。
確かな意味を持って、生きている。
意味の無い人間なんかいない。
では、黒井さんは?
答えは、『持ってない』。
黒井さんは、誰かの為に生きている訳でも、誰かに望まれている訳でも。
確かな意味を持って生きている訳でも、無い。
黒井さんは、ただ存在しているだけ。
いようがいまいが、どうだっていい。
だから正直言って、正義の味方が来たときは少しだけだけど、消えてもいいかなーって思ってた。
でもそんな気分でもなかったから、今度にした。
次あの人が来たら、消えようかな。
別に生きていたって、何にもなんないよ。
無意味な存在、だから。
いないのと、同じだね。
黒井さんなんか、いなくてもいいから。
都市伝説の幽霊は
その憂いを隠すように
今日も偽りの笑みを浮かばせる
コインロッカーの少女は
自身の存在を悟り
無意味に今日を生きる
最終更新:2011年08月09日 00:20