秋山家の寺院内にて。
春美はキリに連れられてやって来た都市伝説の妖怪、
黒井さんと話していた。
「キリ君から聞いたけど…自分の事を『無意味な存在』だって、思ってたんだね」
春美の言葉に、暗い笑みを浮かべる黒井さん。
『…黒井さんは、誰の為にも生まれた訳じゃないからね』
「ううん、そんな事無いよ」
『でも…』
「自分が必要とされない存在だって言うのなら、私達が黒井さんの事を必要としてあげる」
『え…』
「だから自分なんかいなくてもいいとか、無意味なんだとか言っちゃ駄目。生まれてはいけない命なんて無い。それは黒井さんも同じだから…ね?」
『主…さん…』
涙をぽろぽろと零す黒井さんに対し、優しく微笑む春美。
黒井さんは次第に嗚咽を漏らし始め、春美の膝に頭をうずめた。
『うっ、うっ…うあぁああ!!』
「黒井さん…」
『…黒井さ、ん、ずっと…思ってた。自分な、か…自分なんか、生まれてこなくても…良かったんじゃないかって!! いてもいなくても同じだって!!!』
「そっか…辛かったんだね」
『人間が羨ましかった! 誰かの為に存在している人間が!! 黒井さんは凄く凄く羨ましかったんだ!!』
「大丈夫、黒井さんも人間と同じだから」
『うっ、く、ありが、とう…主さん…』
泣き疲れて眠る黒井さんを見やり、春美は部屋の外にいたキリと話す。
「キリ君…百物語を熟知しているのは本当みたいだね」
「そのようでありマスな」
真偽を確かめようと、春美が黒井さんに対していくつか問いを出してみた結果、ひっかけにもかからず全て正解していた。
「後…ここに来る前に
シン・シーに襲われたんだよね?」
「ええ」
「キリ君がピンチになった時―――」
「突然奇声を発したかと思えば、小生に刺さっていたナイフや傷…そしてシン・シーの手が投げたナイフも『消えた』のでありマス」
キリの脳裏にその様子が浮かぶ。
とどめをさされかけた時、黒井さんが奇声を発し、その途端にナイフと傷が跡形も無く、綺麗に消えていた。
まるで『この世界から消えた』かのように。
「そしてその時…はっきり、見たんだね?」
「…黒井さんの目が、『血の色に変わっていた』のを」
「確かに、この目で」
「百物語の認知の深さ、キリ君の危機に対する反応、そして。血の色に変わった目…」
「主、やはり黒井さんは―――」
「うん」
「私達が捜していた―――”百物語第一話”だよ」
百物語第一話
必然か偶然か
都市伝説の少女との出会い
それは真実との出会い
”百物語第一話”という真実との…―――
最終更新:2011年08月28日 21:10