「星殿、ご飯ぜよ…?」
月光はそういいながらドアを開けた。
しかし中は暗く、眼の前に机に星が突っ伏していた。
月明かりだけが照らす部屋の中には、資料が散乱している。ミユカ達の依頼の調査だと星は言っていた。
どうやら調査していてそのまま眠ってしまったらしい。
このところ色々あったから当然だろう。
このまま寝かせておくか、と月光は扉を閉めようとした。
が、その時。
不意に、背中側から見えない力を月光は感じた。
と思うや否や向かい側の壁にその力によって叩きつけられていた。
正面から壁にぶつかった月光はずるずると伏せる。
「ったく、まだお前の実力、こんなもんか?」
鼻を抑えながら振り返ると、今まで寝ていたはずの星がそこに立っていた。
「へ?寝ていたはずじゃ…;」
「あほか。ちょっとした抜き打ち試験だ。クランケは引っかからなかったぞ。」
「考えてみろ。調査しながら寝ていたのなら、部屋の明かりが消えているのはおかしいだろ?」
「あ…。」
「月明かりだけじゃ資料の文字も読めねぇ。そこに気付くかどうかだったんだよ。」
はぁ、と星はため息を吐いたが直ぐに月光を起こした。
「ほら、飯なんだろ?行こうぜ。」
「…そういえば星殿。事務所は変わったが、シドウ殿は相変わらずきとるんがか?」
思い出したように月光は訊く。星はすぐに頷いた。
「場所は教えたんだ。旅行の時以来、相変わらず週一ペースでこっちにくるぜ。」
「いつも自分の部屋に居るけ、気付かなかったぜよ…。」
「ま、同業者だし、打ち解けるのは早かったしな。」
「…は?」
一瞬言葉の意味を理解できず、月光は星を見た。
「あれ、言ってなかったっけ。…って、シドウさんも自分からは言ってないな、そういえば。」
「ちょ、一寸待つぜよ。シドウ殿が同業者って、どうして分かったがか…;」
「所謂『職業病』だよ。ずっとその仕事をしてたおかげで起こる障害、物腰、考え方。シドウさんと話してると、私と被る所がいろいろ見受けられてな。」
勿論確認のつもりでシドウさんには話のノリで訊いたけど。と星は笑う。
「そうだったんがか。」
「
人間観察眼は亜音さんのほうがずっと上だ。多分亜音さんは私より早く気がついてるだろうな。」
「シドウさんは暫く家に居るらしいから、ミユカ達の調査を優先しようと思ってるんだ。」
「あれ、他になんか調べる事あったがか?」
月光は首をかしげる。星はふっと上を向いたが、直ぐに答えた。
「…いや、なんもねーよ。」
(…といっても、放ってはおけないんだよなぁ…。)
夕食を取り再び部屋に籠った星は資料を広げながら考えていた。
(人を壊す愉快犯…。シドウさんや流也がすくなくとも関わってるわけだ。)
だが、行動パターンがつかめない以上動きようが無い。おまけに星に直接かかわってくる「正義の味方」もいる。
「…仕事が無いのにこんなに忙しいもんか?」
その事実に、世間から隔離された彼女は素直に喜べなかった。
最終更新:2011年09月07日 19:17