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朱鷺と弱者

「あー」「退屈」「だけど」「平和だー」

途切れ途切れに呟く一節の言葉。
色んな変わり者がいるホウオウグループの中でも、こんな喋り方をするのは彼女しかいない。
モブ子―――本名、最文 鈴子―――である。

「雑用」「終わってるし」「何か」「する事」「無いかなー」

暇だ暇だと独り言を言うモブ子。
そこへ赤い髪の小柄な少女が近寄ってきた。

「モブ子ちゃん」

同じ末端構成員のトキコだ。

「おや」「誰かと思えば」「トキコちゃん」「じゃないか」
「相変わらず変な話し方するねー」
「そうかな?」「モブ子ちゃんは」「普通だと」「思うけどなあ」「ところで」「何の用」「かな?」
「暇みたいだから、お話でもしようかなって」
「あー」「聞こえてたんだ」「でも」「ありがたい」「お誘いだから」「そうしよう」
「えへへー。隣いい?」
「うん」「構わないよ」

モブ子の隣に座るトキコ。

「さて」「何話そうか」「トキコちゃん」
「えっとねー、前から聞きたかった事があるんだけど」
「何?」
「モブ子ちゃんって結構強いし、仕事もキッチリするよね」
「まあ」「そうだね」
「でも私と同じ末端だから、何でかなーって」
「そりゃあ」「モブ子ちゃん」「モブキャラだから」「ほら」「通行人Aみたいな(笑)」

けらけらと笑うモブ子。

「そういやモブ子ちゃん、特に目立たないよね」
「ね?」「モブキャラに」「スポットライトなんて」「必要ないんだよ」
「でも目立ちたいなって思わないの?」

トキコの問いにモブ子は「うーん」と悩むフリをする。
少しして、彼女はニカッと笑って言った。

「まあ」「モブキャラだから」「そういう欲は」「あったりするよ」「けど」「エリート気取りな強者を」「殺すときは」「モブキャラ」「つまり」「弱者のままで殺したいね☆」

表情とは真逆な言葉が口から出た。

「ふーん…」
「じゃあ逆に聞くけど」「トキコちゃんは」「どうして」「それほど強者に」「なりたいの?」
「私? だって弱いのはあんまり好きじゃないし」
「そっか」「でも弱いのも」「悪くないよ」「現にモブ子ちゃん」「弱いし(笑)」
「…何でそんなに笑ってられるの?」

訝しげに聞くトキコに対して、モブ子は笑ったままこう答えた。

「えー」「決まってんじゃん」「モブ子ちゃん」「生まれながらの」「弱者だし?」「それに」「弱いって」「素晴らしいと思うんだ」
「素晴らしい?」
「だって」「皆弱かったら」「差別も」「侮蔑も」「嫉妬も」「ぜーんぶ!」「この世界から」「消えるんだよ?」「それって」「とっても素敵でしょ☆」

両腕を広げ、『弱者の弱者による弱者の為の理想論』を語り出すモブ子。

「それらが消えれば」「誰も傷つかない」「誰も悲しまない」「誰も蔑まされない」「だから」「平和な世界になる」
「なるほどー」
「その為」「モブ子ちゃんは」「いつも頑張ってまーす!」「みたいな(笑)」
「でも鴉さんは、そんなものは地獄に過ぎないって言ってるよ」

するとモブ子の表情が『あの』笑顔に変貌した。

「地獄?」「んな訳ねーだろ」「もしそれが」「地獄だってんなら」「あのクソガラスの言う世界は」「強者だけが支配する」「本当の地獄だよ」「あはっ☆」
「何で?」

トキコの疑問に、モブ子はこう答えた。

「だって」「弱者の」「逃げ場も」「安らぎも」「日常も」「何にもないから」「だから」「強者は弱者の為に」


「滅ぶべき」


朱鷺と弱者

(モブ子ちゃんは強者が嫌い)
(特にクロウ君が一番嫌い)
(弱者の心を)(弱さを)(生き方を)
(知らないのだから)

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最終更新:2011年09月07日 19:17