アットウィキロゴ

典型×典型

眼の前でてきぱきと朝食を作るこの女の子。見た目からして高校生だろう。
我孫子 佑と彼女は名乗った。
黒髪のおさげ、細身の体、分厚い眼鏡。どうやら典型的な図書委員タイプらしい。
しかし、家を見回してみても親と思しき人影が見当たらない。

「…なぁ、佑っつったっけ?」
「はい?なんですか?」
「お前、親は?一人暮らしなのか?」
「いえ、でも両親とも出張とか海外勤務が多いので殆ど一人ですね。」
さらりと答えるあたり、どうやら珍しいことではないらしい。
彼はぼんやりと祐を見ていた。

「…あの、」
そう呼びかけられて、彼ははっと顔を上げた。どうやらどこかで意識が飛んだらしい。
見ると、佑が朝食を並べ終えて此方を見ていた。
「名前、教えてくれませんか?」
「名前?」
「此処に来る時、教えてもらってなかったなぁと。」

そういえばそうだ、と彼は納得し、普段使う『偽名』を名乗った。
「日出 太陽っていうんだ。」
「タイヨーさん、ですか。」
ちょっとイントネーションがおかしい気がしたが、間違ってはないので訂正しなかった。

「何で公園のベンチなんかで寝ていたんですか?」
「言ったろ?生憎宿無しでね。荷物も殆どないが、野宿するしかなかったわけだ。」
「失礼ですけど…もしかして、無職?」
「ははは!そんなわけないだろ?仕事はちゃんとしてるし、給料はもらってる。」
そりゃあ勘違いするよな、と太陽は笑った。

「それはそうと、今こうしてちゃっかりお邪魔しちゃってるけど、迷惑にはならないのか?」
「いえ、さっきも言いましたが、此処には殆ど私しかいませんので大丈夫です。」
「そうか…。でも迷惑ばかりはかけられないな。」
さっさと本拠地決めねぇとな、と太陽は思った。

「私はいいんです。一人じゃちょっと寂しかったのも、あるし。」
佑が少し俯いた。瞬間、太陽の息が詰まる。
その姿が忘れかけていた記憶をかすったのだ。

―あいつは、寂しいんじゃないだろうか―

それは眼の前の彼女にも同じことが言えて。
もしかしたら、一緒にいてあげる事のほうが、彼女にはありがたいのかもしれない。
彼は咄嗟に思い立ち、返事を返していた。
「…そっか。分かった。なら、本拠地が見つかるまでの間、お世話になってもいいか…?」


典型×典型


「…タイヨーさんって、なんか、面白い人ですね。」
「そうか?…まぁ、よくいわれるんだけど。」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年09月27日 10:54