「……何をしているんだ、お前達は」
幹久朗と共にストラウルを訪れたゲンブが背後に見たものは、いかせのごれ高校の制服を着た男女二人組。
片方は
夏香 由衣。メンバーだ。もう片方は……確か
数寄屋 闊歩とか言ったか。以前能力者絡みのトラブルで顔見知りになった男だ。
「ゲンブさん……や、これは」
「いや、栞を取りに」
「栞? これはお前のものか?」
「ですよ?」
あっさりと答えた闊歩に、思わず頭を抱える由衣。幹久朗が言う。
「ほお……ってことはあれか、お前も能力者か?」
「? 違いますけど」
「馬鹿言え。常人にあんな」
背後の栞が突き刺さっていたところを指し、
「非常識な真似が出来るか」
「いや、そう言われても」
全く気負った様子も、隠す様子もなく語る闊歩に、幹久朗はいささか面喰った。本当に能力者なのか、わからなくなったのだ。もともと外見で判断できることでもないので、実際に力を使っているのを見て判断するしかない。それでも、以前ウスワイヤにいた
ブランカ・白波などのように、自身にのみ効果のあるものも多いため、正直見分ける方法はないに等しい。
「……どうする?」
「どうする、と言われてもな」
栞を持ったまま、ゲンブは反対の手で頭をかいた。言葉遣いのせいで忘れられがちだが彼は20の若造である。正確な判断力を求めるのは酷というものだった。
ともかく情報を得ようと、話をしてみる。
「さっき『おかしな人』がどうの、と言っていなかったか? これと関係があるのか?」
「それは……」
闊歩が語るところによれば、少し前にここを歩いていて「おかしな人(彼の認識する能力者のことらしい)」と思われるものに襲われ、咄嗟に栞を投げつけて撃退したらしいのだ。その時、一枚だけ忘れて帰ったのがこれらしい。
「なるほど。……」
しばし、ゲンブは沈思する。ここはストラウル跡地。少しの変化で何が起きても不思議ではない。
その「何者か」が誰で、あるいは何であるにせよ、この場で起きた出来事ではほとんど手掛かりにならない。ましてや、それが消えていてはなおさらだ。
「! 待てよ」
「? 何か、思いついたんですか?」
「ああ。……一人、この手の物事にうってつけの奴がいた」
言うが早いか、ゲンブは携帯を手に取る。
「ん? ……ゲンブさんか」
同時刻。バンド関連で呼び出されていた正人は、上司からの連絡に携帯を開いた。
「どうしたんすか?」
「ああ、ちょっと野暮用。正輝、浩美、悪いけど俺は先に上がるわ」
「えー!? もう帰るんですか?」
「遠ちゃん、無理言っちゃダメだって。一条寺先輩にも事情があるんだから」
「そういうことだ。悪いな」
二人に軽く頭を下げて外に出た正人は、表情を引き締めて通話を繋ぐ。
「何ですか?」
『アルマか? 俺だ、今ストラウルにいる。少々、解析してもらいたいことがあってな』
「久々に出番ですか……了解、直ちに向かいます」
『ニット帽とゴーグルを忘れるなよ』
「わかってますよ」
言うが早いか、正人は片手でポケットからそれらを取り出し、素早く身につけて顔と髪型を隠す。
『それが済んだら、俺に同行してくれ。こちらも任務だ』
「忙しいですね。了解」
応えて通話を切ると、正人……『アルマ』はバイクにまたがり、その廃墟目指してエンジンをふかした。
困った時の……?
(当てにされているのは確かだ)
(投げられている気もするが)
最終更新:2011年10月05日 21:10