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違う孤独を背負う者

「…厄介なことに、なったの。」
通学路を走る人影を屋上から見下ろし、彼はため息をついた。
「他人に迷惑をかけたくない。だから自分から吐かないし吐けない。吐き方を知らない。」

以前に何度か見たことがある。
まだ自分の兄が審判をやっていた頃。一人の少女が彼の元に来た。
彼女は自ら命を断った者だった。
こういう者は大抵地獄送りにされる。命を粗末にするなど言語道断だ。
しかし、彼女は語った。

『誰も味方をしてくれなかったというのに、他に何をすればよかったのですか。』

彼女には友人と呼べる者が一人もおらず、思い切って親に打ち明けても笑って流された。
それどころか「これ以上そんなことを言うんじゃないよ。他人に顔向けができないじゃないか」とまで言われたという。
占いで医療が行われていた時代だ。心療内科や精神科があるわけがない。
やがて体も心も悲鳴を上げ、彼女は自らの命を断ったという。

今、目下の通学路を走る学生もこれに似た近い状況に置かれている。
悩みを打ち明けられないがあまり、自ら抱え込むタイプ。
これは後に引きずるほど、身を滅ぼすタイプなのだ。

それだけではない。
先生に関わった以上、何時表沙汰になってもおかしくない。
ならば、何時いじめが陰険になってもおかしくないのだ。

「…幾ら自分の問題があるとはいえ、今はこっちの方が深刻じゃ。」
自分の問題と言えば例の人外狩りだが、この所音沙汰が無い。
警戒しておく必要はあるが、今の問題の深刻さを考えるならば、彼女の方が重いだろう。
一人頷くと、ブレラを広げて姿を消し、屋上から飛び降りた。

「無論、じゃな。カイムばかりにまかせるつもりもあらん。」
空を蹴りだし、ゴクオーは空から彼女の後をついていった。
「念のため暫く様子を見ておくかの。」
勿論何かあれば割って入るつもりで。


違う孤独を背負う者


裁く権利をなくしても、守る力はあるはずだから。

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最終更新:2011年10月13日 19:51