夢を見るのは脳が起きている状態で、記憶の整理をしているときだそうです。
約3時間ごとに30分程度くるこの睡眠はレム睡眠と呼ばれています。
普通、この睡眠の間は夢を見ていますが、覚えているのは極稀だそうです。
ですから僕は、このモノクロの夢が本当に夢なのか自信を持てません。
僅かに開けていた窓を開け、誰も寄り付かなかった部屋を覗きこんだのは、僕と同い年の女の子でした。
それからその女の子は毎日同じ時間、僕が部屋の換気の為窓を開ける時間に遊びに来ました。
毎回無視を貫く僕に構わず話しかけ、一人で笑っていたのを覚えています。
最初こそしつこく思っていましたが、気がつけば僕は彼女を気にしだしていました。
そしてある日、窓が開くのを見計らって僕は尋ねていたのです。
「どうして毎日僕の所に来るんですか…?」
はじめましても、こんにちはも、僕らに必要はありませんでした。
それから窓が開くたびに僕らは何気ない会話を交わし出しました。
やがて彼女はその窓から僕を外へと引きずり出しました。
気味悪がられようと、何を言われようと、彼女だけは僕と一緒に遊んでくれました。
しかしそれでも僕の世界に色がつくことはなく。
モノクロの世界のまま僕は彼女の背を追っていました。
…夢だから、でしょうか。
気がつけば一瞬にして、僕も彼女も成長し、とある倉庫の中に居ました。
…覚えています、この景色。
それは、僕たちが不良として暴れまわっていた頃の記憶。
そしてこの倉庫は、僕の「最後の」、彼女にとっての「最期の」喧嘩でした。
明らかに多い数を裁いていく彼女に僕は見とれていたのを覚えています。
そして、後ろからの奇襲への注意を叫ぶのが、遅かったことも。
コンクリート固めの地面に倒れ込む、僕の大切な存在。
白と黒だけの世界に、僕は初めて「色」を見ました。
それは、流れ出る赤と、彼女の染めた青でした。
息絶えたことは、眼に見えて分かる事実でした。
暫く動けなくなったのを覚えています。
僕は唯茫然と、彼女を見ることしかできなかったのです。
後ろから襲いかかってくることに気付いてても、僕の体は動きませんでした。
彼女なしでは僕は生きていけない。このまま死んでも構わないと、僕は思っていたのです。
しかし。
自分の頬を、何かがかすめました。
後ろから轟音。振り返ると、不良の一陣が倒れ込み、壁に今までなかったはずの鉄柱が突き刺さってました。
がさがさと音がして、立ちあがる気配がしました。
僕は振り返り、その光景に絶句するしかありませんでした。
空間に浮かび上がる砂鉄。
それが形を成し、幾本もの鉄柱へと生まれかわる。
次の瞬間、鉄柱はその場から姿を消し、敵であった不良を襲っていました。
眼の前で起こった確かな光景に、僕はただ唖然とすることしかできませんでした。
そこからの映像はまったくもってぐしゃぐしゃで。
突然倉庫の端が爆破し、僕は気絶してしまったようでした。
モノクロの世界に最後まで写っていたのは。
ただ美しい青色だけでした…。
あれから数年。
僕は彼女から信じられない事実を語られました。
「あの時」と
同じように、僕も死んだというのでした。
一重には信じがたいこの言葉。
ぼくが信じる事が出来たのは、きっと語ってくれたのが彼女だったからかもしれません。
僕も彼女と同じなんだ。
「おかしな人」になったんだ。
込み上げるおかしな笑いをとどめることができませんでした。
僕は君と同じ世界に生きることを許されたんだねと、僕はそう解釈することにしました。
それは実にありえない、実にすばらしい現実でした。
僕の眼の前の景色は彩り始めていました。
モノクロの世界から脱することができるのは、もう少しなんだね。
僕は信じるよ。
この先どんなことが待ちうけようとも、きっと君に追いついてみせる。
君と居る事が出来るなら、どんなことでも乗り越えて見せるから――。
モノクロセカイ
病棟に警報が鳴り響くのは、この後すぐの話だった…。
最終更新:2011年11月07日 14:21