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『決別の時は近い』

そこは保健室から近い空き部屋・・物置と化している部屋だった。
白いシャツに黒い長ズボン、一見教師のような風貌の女性が気絶している青年、玉置静流の頭を撫でていた。
「・・よかった。頭は打っていないようね」
そう安堵の一声を発したのはロゼだった。

アオイがシズルをバードウォッチャーの死角ともいえる密室に連れ込んだ時には焦った。
「・・何やっているのよ。私」
頭が真っ白になる、という表現が合っているだろう。
何も考えれず、真っ先にこの場に、そう、いかせのごれ高等学校に侵入してしまった。
ここにたどり着くまで会った者全員に能力アイコンタクトを使用できたか曖昧だ・・。
これほどまでこの男に執着してしまっている自分が滑稽に思えてくる。
冷静になってみればここに来てしまったのは賢明な判断ではない。
彼の身の安全は直に確認できた。
さっさと去らなくては・・。
全く本当に・・執着にも程がある・・。

その場を立ち去ろうと彼から目を離した一瞬の隙だった。
「寝込みを襲うとはいい度胸してるじゃねぇか」
「!!!」
彼の片手が虚空を切る。
その手には黒い、銃。
______________

「・・・・っふふ。体は覚えているもの、ね。」
そう呆れたように笑うのはロゼだった。
瞬時に『シズル』の銃を持つ手首に手刀し頭突きをしたのだ。
軽く脳しんとうを起こしたのだろう。
シズルは再び床に伏したのだった。
そんなシズルを見つめて溜息をつく。

弱くなった・・。
あの頃のシズルだったらもっと俊敏に動いていた。
あの頃と変わらなければ、私はきっとこの場に立っていない。

ウスワイヤ、ホウオウグループの喧騒に千年王国再来。
私を倒せない程度の力では。
きっと、彼は今の争いに生き残れない。
おそらく踏み台が、いる。
ならば。

________ガチャリ。

「終わったのか」
「!・・えぇ」
開いた出口を見つめる。

そこに阻む男は、ロゼの足元で気絶している玉置先生を一見した後、
「殺したのか?・・いや、生かしたのか」
淡々と乱れた服を整えるロゼに平然と問う。

「・・放っておけばそのうち目が覚めるわ、クロウ
「そうか」
「そうよ・・・・・。」
そう言いながらロゼはその場を去ろうと出口の前に立った。
しかし、クロウは微動だにしない。
そんな彼を見つめ諦めたようにロゼは微笑んだ。
「簡単には見逃してはくれない、か。『仕事』だから」
「そうだ。見て見ぬ振りはできん。仕事上な」
「でしょうね。それでこそ、ホウオウグループの幹部、クロウ様だわ」
彼の視線に合わせ、アイコンタクトで情報を送る。
内容は、今まで自分の動向と、シズルとの過去の記憶のすべて。

「戦友・・いや、親友か。ずいぶんと思い入れがあるのだな?」
「・・そんな遠回しに言わなくてもいいわ。狂ってると正直に言われた方がマシよ」
「まさかバードウォッチャーでこんな職権乱用していたとはな、この事は誰かに知られているのか?」
「いいえ、同僚では貴方が最初よ」
「はぁ・・・わかっているはずだ。ただでさえ緊迫している状況に、だ」

「余計な争い事を加えるような真似事をしてどうする」
クロウの殺気に当たり、ロゼはこくり、と唾を飲み込んだ。
「言いたい事は・・分かっているわ、分かっているのよ、でも」
「でも?なんだ。ホウオウ様によく接しているお前がそんな調子でどうする?俺に言わせればこれは裏切りにも近い行為だぞ?」
「!!そんなつもりは・・・・っ冷た!!」
「・・わかっているのなら、そいつで頭を冷やしてさっさと職場に戻れ」
________________

「ん・・あれ・・?」
しばらくして玉置はようやく起き上がり辺りを見渡すと同時に額に貼られたものをぺろりと剥がした。
(冷えぴた・・?)

『決別の時は近い』

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最終更新:2011年11月07日 14:22