「くそっ!! どういうことだ!!」
『諦めなさいよ、もう。誰かが来るまで、絶対ここからは出られないんだから』
桜の霊樹が佇む、幻想的な空間。時間は昼間にも関わらず、空におぼろ月が浮かぶ場所で、
水波 ゲンブは荒れていた。
「一体何がどうなっている……俺は連絡のために
アカノミに会いに来ただけだと言うのに」
思い起こされるのは、数日前にアカノミのもとを訪れた時の事。
樹の状態だったので会話にはならなかったが、シフトを相談する日時を伝えて戻ろうとしていた。が、その途中であろうことか迷ってしまった。
『? ここはどこだ……』
しばらく歩いて気がついて見ると、そこは桜の大樹が佇む場所だった。しばしその威容に目を奪われたゲンブだったが、こうしている場合ではないと踵を返してその場を後にした。
が、
『……!? ば、馬鹿な』
真っ直ぐ歩いて来たはずなのに、なぜか元の場所に戻ってしまっていた。どういうことだ、と別の方向に走ったが同じ。さらに別の方向へ、今度は後ろ向きに、桜を見ながら離脱したが、背中が何かにぶつかった。
『……ま、まさか』
そのまさかだった。見上げた視界には、花びらを舞わせる桜の大樹があった。
その後どうやっても出ることが出来ず、途方に暮れていたところで
サクヤと出会った。
『どうしてあなたがここにいるのかしらね……ここ、人外でないと入れないのに』
「人外?
シン・シーが狙っているような、か」
『んー、ちょっち違うわね。妖怪だけよ』
つまり、人外と言ってもマナやキリのような部類は来られず、幹久朗やアカノミ、
ゴクオーでなければダメだということらしい。
『あ、言っとくけど私は無理よ? 「私」自身はここにいるだけだから』
期待してみたが無駄だったらしい。
『まあ、諦めて誰か来るのを待ちなさいな。ここにいる限りは、あなたの時間も止まってるんだから』
「安心できるかッ!? とんだ浦島太郎だ、こいつは……」
『あー、あの300年近く行方不明になってた漁師? 何やってたのかしらね……』
「いたのか、実際に!?」
もう、無茶苦茶である。
「何とか出られんものか……」
『だーから無理って言ってるでしょ』
達観したと言うか、若干呆れ気味のサクヤ。諦めの悪いゲンブが鬱陶しいらしい。
「そうは言うがな……」
『人生、時には諦めも大事よ』
「しかしだな……」
『……はぁ』
玄武、桜に惑う
(少しの不運がとんだ事態に)
(妖異でなくば踏み入れず、見つけることも難しい)
(……誰か見つけてやって下さい)
最終更新:2011年11月19日 14:00