「……ふん」
地獄耳には定評のある
クロウ。ある程度だが、あの後の
クルデーレ達のやり取りも聞こえていた。
神経質すぎると彼女は言ったが、いかに
ホウオウの采配だとても、出戻りの裏切り者を信用しろと言う方が無理な話だろう。
まあ、関係はない。
ジングウのことだから気付いていて放置しているのだろう。あの男は究極的な話、自らの命をもコマとして使う事を躊躇わない。
「さて……」
グループ一の暇人として有名なクロウだが、これは彼が担当する任務が追撃・証拠隠滅であるためだ。現在のところ、いかせのごれ高校に非常勤教師として潜入しつつ、
ノルン・ノア抹殺の機会をうかがっている。
ただ、情報ではノルンに不可思議な現象が起きたと聞いている。
(迂闊に手を出して竹箆返しを喰らうのは……避けねばな)
状況が確定するまでは手を出さない。そこがこの男の長所であり、短所でもあった。組んでいたメンバーがナハトの他にもう一人おり、それぞれに連携することで任務を遂行していた。
そのチームも、9年前にナハトが消えて以来活動した記録はない。
(奴め、どこに消えた……遠くにいけるはずがない、いかせのごれのどこかにいるのは確かなのだが)
潜入メンバーにも情報収集を依頼しているが、とんと報告が入らない。だが死んだとも考えられない。そんなヤワな女ではなかった。
(奴が帰還せねば、9年前の任務が完了出来ん。一体どこに……)
「おう、クロウか。何か久しぶりだな」
「ん?」
横から声を掛けられて振り向く。その表情が、珍しくふっ、と和らぐ。微かに、だが。
そこにいたのは、自身と並ぶ長躯、ぼさっとした黒髪の男。
「……お前か。久しいな、ルーツ」
「同じグループにいるってのに、ここ数年は顔合わせてないからな」
「当たり前だ。俺は外部、お前はここが仕事の場だろうが」
「ところがどっこい、それも今日までだ。総帥から指令が下ったのよ」
「ほう?」
内容を確認してみると、彼に課されたのは「外部任務に当たっているクロウのサポートに回れ」との任務だった。
「……またお前と組むとはな」
「そういうなって。……後はナハトの姉さんがいればな……」
「言うな。奴は生体兵器に過ぎん」
そう言いつつも、クロウ自身複雑な表情をしている。
「……
ミネルヴァは?」
「その辺ほっつき歩いてるんじゃないか? 探すか?」
「無駄だな。奴は一度隠れたら見つからん」
彼女の能力は嫌と言うほど知っている。具体的にはトラブルメーカーとして。
「で、どうするクロウ?」
「……当面、ここに用はない。戻るぞ。潜入メンバーにお前の事も伝えておくとしよう」
「了解っ、と」
「闇」「夜」の「鴉」と「梟」
(歯車たる男にも仲間はいる)
(顔を合わせることも、思い出す事もあまりなかったが)
「ルーツ」
「ん?」
「正義とは何だ? お前はどう思う」
「勝った奴が正義」
「……なるほど」
最終更新:2011年11月23日 13:16