「はい、ストップ」
「おわぁぁっ!?」
アオイを引っ張って学校を飛び出したスザクだったが、その彼女を校門を出たところでいきなり止めた人物がいた。最近見慣れたその人は、
「あ、アカネさん!?」
「どうしてここに……」
「
アズールが電話してるのを聞いて、ね。こうなるんじゃないかと思ったら、案の定」
どうやら謎の男―――おそらくは
ヴァイス―――の一件に関わっているらしい。
「あなた達の出番は今回はなしよ。学校に戻りなさい」
「駄目です! 美琴があんなになってるのは、きっとあいつが何かしたに違いないんだ! だから―――」
言いつのるスザクの言葉が、中途で切れた。アカネが有無を言わさずその頬を引っ叩いたからだ。
「いい加減にしなさい、スザクちゃん」
「ぇ―――」
「今飛び出して、何ができるの? どこにいるのか、そもそも本当にあの男なのかもわからないのに」
「そ、れは……」
「最悪の事態に備えて、今色んな人が動いてるわ。……はっきり言わせてもらうと、あなた達が出てくると迷惑なのよ」
容赦も何もない、辛辣な物言い。だが、反駁せず黙っているのは、それが事実だと感覚で理解したから。
そして何より、アカネは口先の慰めも、根拠のない否定も使わない、ある種のリアリストだと知っていたから。
「動く人間が多ければ多いほど、あの男は感づくわ。……今あなた達がすべきは、学校にいること。迂闊に出歩いてあの男に『捉まったら』……わかるわね?」
「……はい」
「後輩が心配なのはわかるけど、何でもかんでも自分が自分が、って動こうとしないの。たまには、周りを信じて任せてみなさいな。仲間や友達っていうのは、そういうことでしょ?」
しばしの無言。ややあって、スザクはただ頷いた。
「……戻ります。アオイ、行こう」
「は、はい。……あの、アカネさんは大丈夫なのでして?」
アオイの心配ももっともだったが、アカネは「大丈夫よ」と笑う。
「頼もしいボディガードがついてるのよ、私には」
そう言って彼女が親指で示した先に、一瞬だけ少女の姿が浮かんで、消えた。
「なるほど、ここにいたのな」
「だと思います。直接みたわけじゃないんですけど」
同時刻。司・冬也と合流した流也は、彼が謎の男の話を聞いたという場所に来ていた。
(ふむ。やっぱ、奴か……?)
初対面の人間にいきなり信用されるとなると、よほどの有名人か、さもなくば精神系の能力者。それができるのは、流也の知る限り二人。そして一人は女。となると一人しか残らない。
「こりゃ、どうも俺の予想通りかも知れねーな。よし、お前らは帰んな」
「ええっ?」
「おい、ここまで来てそりゃどういうことだ」
「その男が俺の知ってる奴なら、かなりヤバい。っつーかお前らじゃどうにもならねぇ」
流也としては二人の身の安全を考慮して(冬也に関しては実戦向きでないと見たのもある)の発言だったのだが、司が猛烈に反発して来た。
しばらくの間、帰れ帰らない危険だ知るかと問答が続いた揚句、流也が渋々折れた。
「……ったく、しゃあねーな。本気でヤバくなったらマジで逃げろよ」
「わかりました」
「それは約束する」
二人が了承したのを受け、流也は連絡を取る。相手は星……と、その前に向こうからメールが来た。
「っと、カチ合うところだったな」
本文を開くと、『
百物語組の協力を取り付けた。現在こちらも捜索中。そちらが一段落し次第、指定場所で一度合流してくれ』と書いてあった。指定されていたのは、春美のいる寺院。そこで一度落ち合おう、とのことだった。
(どーすっかな)
これを受けてしばらく悩んだ。ネックなのは司。この男が「裏側」の事情に通じているとは考えにくかったが、だからと言って確かめるわけにもいかない。とはいえ、このまま連れて行ったらそれはそれで問題が起きかねない。
思考の末に方針を決め、流也は司に話しかけた。
「なぁ――――」
某所。
「……の道を行けばすぐですよ」
「ありがとうございます」
「いえ、任務ですから」
交番で道を聞いた女性が、礼を言ってその場を去る。帽子を目深に被った警官が軽く会釈をした時、入れ違うように別の集団がやってきた。
「おや?」
明らかに不審なその集団は、3人。
うち一人は蛇のような仮面、一人はマスクをつけている。
「こいつがそうか、尓胡?」
「そうサ、コイツだ」
「なるほど……確かに」
(……なるほど)
ファースト・エンカウンター
(最初に接触したのは)
(始末屋)
「……ほう。こ奴が、美琴の言うておった男か?」
「恐らくは、な。俺にとっては妻の仇……だった男だ」
最終更新:2012年01月08日 22:10