「チヅルさん、話をですね」
「弁償しますから!!!」
「…」
たわいない会話をしながら
ヴァイスは自分の持った見解について考えを
まとめていた。
だからだろうか、
だから、動き出していた数ある勢力の中で、
一番最初に彼に接触した男の気配に気付けなかったのだろうか。
「トランスさん!」
「は?」
「え?」
ヴァイスの目にしたものは
ひどく特徴のない男だった。
しかしヴァイスはこの男にひどく警戒心を持った
自分は「トランス」という人間ではないから。
必然、千鶴は気づかない、
しかし彼女を守護する親衛隊は、
その「モノ」の危険に気付いた、
その「モノ」の内側に禍つものを見つけてしまったから
しかしそのどちらもこの男の前に動くことはできなかった
まるで金縛りにあったように
「探しましたよ!また仕事を抜け出してナンパですか!
一緒に来てもらいますよ!今日という今日は逃がしませんから!!
お嬢さん、こんな男とつきあっても良いことありませんよ。
お金は私が出しときますので・・・
あぁ、私はこういう者です。
さぁ行きますよトランスさん!!」
男はヴァイスに一気にまくし立て、千鶴に一枚の白い名刺を渡し
ヴァイスを引きずるように店から出て行った
「なんだったんだろう」
呆然と、残された千鶴はつぶやいたのだった
ヴァイスが連れ込まれたのは薄暗い路地だった
まずヴァイスは根本的なことを聞くことにした
「貴方・・・いったい誰です?」
「あぁ、私ですか?私はこういう者でございます」
差し出した白い名刺にはこう書かれていた
『作家「トランス」アシスタント「みちぎし・かんむり」』
「ふざけないでください」
珍しく怒気のこもった声音でヴァイスがいうと
男の雰囲気ががらりと変わった
「いやだなぁ、冗談だよ、冗談。
ちょっと用が合ってねぇ」
実に軽い口調になった男の声は、さっきとは別人のように変わっていた
「未だピンとこないみたいだねぇ、・・・じゃあこれでどうだい?」
こんどは男の姿がぼやけ、別の形を取った
ピエロの衣装に似た複雑な服に仮面をかぶった男
その姿を見てヴァイスはようやく全てを悟った
「!・・・なるほど、君がピエロか」
「そういことだよ君にはもう少し早く接触するつもりだったんだけどね」
「ほぅ?何故そうしなかったんだい?」
「ボクが・・・ケホ・・・止めたんだよ。」
「!」
新たな気配にヴァイスが戦慄する
「あぁ・・・身構えなくて・・・良いよ・・敵意は・・・無いから」
新たに現れた存在はひどく不健康な声でヴァイスに言った
「なんだ、来てたんだ『
ジェスター』」
「・・・うん」
ジェスターと呼ばれた青年はひどく青白い顔をしていた
この青年が素顔を見せるのはひどく珍しいのだがそれは
別の話である
「貴方は何者なんです?」
やや不機嫌そうな声音でヴァイスが問う
「『死霊術師(ネクロマンサー)』・・・これ以上は・・・教えられないよ」
そう言うとジェスターはピエロの方に向き直り
「ボクは・・・未だ早いと・・・いったはずだ」
怒気を含んだ声でそう言った
「いやぁ、ごめんごめん。我慢できなくってサッ☆」
「・・・チッ」
「反応が冷たい!!」
「・・・とりあえず・・・今の貴方は未だ・・・『未完成』なのですから
- 自覚を持ってください・・・用件だけ済ませて早く帰りますよ」
「ちぇー、まぁいいや単刀直入に言うよ?
ヴァイス君、僕らの仲間に入らないかい?」
しばしの沈黙の後
「は?」
ヴァイスの口から出たのはそんな間の抜けた言葉だった
「どういうことです?」
「いやぁ、別に嫌ならいいんだけどさ?
僕らの組織、『
運命の歪み』総意だからさ
一応勧誘することになったんだよねぇ」
実に他人行儀にピエロが言い
「返事が決まれば・・・その名刺を・・・燃やしてください・・・では」
ジェスターが締めくくると二人の姿は影に消えた
ヴァイスが名刺を見下ろすと純白だった名刺は漆黒に変わり
骨のように白い字でこう書かれていた
『運命の歪みNo0ピエロ○月○日【付き添い人No3ジェスター】【尋ね人ヴァイス様】』
と・・・
「クロノ道化師と白き闇」
最終更新:2012年01月23日 08:25