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それぞれの行動

(……やっぱり頭痛い……)

机に頬杖をついたまま、佑はため息をついた。
先日から小さく鈍い頭痛が止まらない。
もっと言えば、調理実習の後から、だ。

(タイヨーさんには、心配かけちゃったかな…)

夕飯を作る気力が沸かなくて、スーパーで惣菜を買ってきたのを妙に思われたらしい。
「具合が悪いのか?」と心配そうに聞かれたけれど、大丈夫だと答えた。
頭痛も疲れから来るものだと思っていたし、一晩眠れば治るだろうと軽く考えていたのだ。

(…まあ、あまり良くなってなかったんだけどね…)

頭痛は悪化はしていなかったが治まってもいなかった。
学校を休むことも考えたが、熱も何もないし、我慢できないほど頭痛がひどいわけでもない。
そんな状態で学校を休むのはズル休みに思えて目覚めが悪いので、太陽の気遣いを突っぱねてまで学校に来たのだ。
その判断を佑は少し後悔していた。小さく断続的な頭痛は、激しいものより体力を削られる。

授業にも身が入らずに窓の外をぼんやり見ていると、赤い髪の女生徒が白い髪の女生徒を引っ張って学校を出ていくのが見えた。
その後、少しして戻っていくのが見えたが。

(……何なんだろう)

小さくそう思いはしたが、ずきりと鈍く痛む頭に、何度目か分からないため息をついて視線を黒板に戻す。
今日は余計なことを考えるのはやめにしよう。そう、心に決めた。

お昼を少し過ぎた頃。
佑は、珍しく学校を早退した。


「……ふむ」

ほぼ同時刻。
夕陽はシドウと名乗る探偵から教えてもらった男の情報を頭の中で反復していた。
ヴァイス=シュヴァルツ。世間を騒がす愉快犯であり、シドウの妻の元・仇らしい。
他にもいろいろ教えてもらったが、総合して一言で言うならば、危ない奴だろう。

(下手に接触したら、我ごときではひとたまりもないのう…)

夕陽が持つのは、盲目である自分の目代わりになっている特殊能力「心眼」のみ。
景色のほかに普通なら見えないものも見ることができるが、それだけだ。
軽い護身術ならば会得しているが、その程度では焼け石に水だろう。

「…おい」
「む?ああ、すまぬ。考え事をしておった。……何じゃ?」
「何故、こいつのことを調べる?」
「……」

静かな語り口だったが、その裏の「下手に首を突っ込むと死ぬぞ」という思いを、夕陽の見えぬ目は感じ取った。
何か言われる前に、先手を取って口を開く。

「……安心せい。自分の力量ぐらい弁えておる。自分が死ぬと分かっていて突っ込んでいくほど馬鹿ではないよ」
「む……」
「我はただ知りたかっただけじゃ。奴が美琴に何を思うてあのようなことを言うたのかを、の。…主の話を聞く限り、邪な理由だろうがのう」

それだけ言うと、持っていた袋から小さな箱を取り出してシドウに半ば押し付ける形で渡した。

「本来、料金を払わねばならんのだろうが、これを買うてしまった故持ち合わせがなくてのう。
今度きちんと精算する。今はとりあえずこれで手打ちにしてくれんかの」
「これは何だ?」
風月堂の菓子じゃ。家族と賞味すると良いじゃろ」

シドウが箱を受け取ったのを確認すると、「すまぬの、感謝する」と言い残し、何か言われる前に退散した。

「……さて。やることが無くなってしまったのう」

美琴のことは心配だが、これ以上首を突っ込んでは本末転倒の結果になるだろう。
もう少し辺りを歩いてみて、情報が得られないようだったら帰るとしよう。
そう考えると、夕陽は歩き出した。


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最終更新:2012年01月23日 11:33