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「リュウザのとある日。」

「リュウザのとある日。」


出雲寺組に居候するようになったが、昨日の今日で襲撃してくる不遜な輩も居らずにリュウザとコトハは暇を持て余していた。
あてがわれたのは六畳部屋。
リュウザは2段ベッドに横になりながら思い返す。

『では、コトハさんとリュウザさんには客間を・・・』
『おっと組長さん、その必要はねぇよ。』
『え?』
『物置きかなんかで良い、所詮こいつらは居候だ。寝る場所さえありゃ良い。』
ショウゴの言葉にムッとするアスミ。
『いいえ、そういう訳にはいきません。そんな事をすれば末代までの名折れです。』
『いやいや、ついこの間まで抗争していた相手なんだ、そのくらいでいいさ。なあ、お前ら。』
ショウゴは一部の視線に気づかないふりをしたまま、リュウザとコトハに話を振ってきた。
『私は構わないわ。荷物なんてそんなに多くないし。』
『寝れればなんでも。』
『と、言うわけだ。』
しかし、ここで待ったをかけたのはライフォンだった。
『ちょっと待つアル、オトコノコとオンナノコが同じ部屋は危ないネ!』
『いーじゃねーかライフォン、なにが危ないってん・・・』
アキトが言いかけた所に、サエコが脛蹴りを喰らわす。
『アキト五月蠅い、そんな事も分からないからアンタはいつまでも煮え切らないのよこのニブチン!』
『な、なんだとぉ!?』
言い争いになりかけた所を、ショウゴが遮る。
『鬼英会の部屋割でもこいつら同じ部屋だったから大丈夫なんだ、なぁリュウザ?』
『ええ。それに・・・』
コトハを一瞥するとリュウザは言い切った。
『いくら外見が美人でも、悪魔と交尾する気にはならないよ。後が怖いからね。』


(皆ドン引きだったなぁ…)
なお悪かったのは、コトハがその言葉を聞いて取った行動だ。
引っ叩くわけでも泣き真似をするわけでも無し、含みを持たせた笑みを浮かべたのである。

そうして6畳間に2人は越してきた訳だった。

2段ベッドの上がコトハ、下がリュウザ。ふと気付くと、ベッドの淵に足を引っ掛け、逆さ釣りになったコトハがリュウザを見ていた。
Tシャツがめくりあがっている。
腕組みをしてるから別にエロイベントな訳じゃない。
むしろこれは・・・

「リュウザ、アイスが食べたいわ。」
「・・・。」
「聞こえないの?アイスが」
「自分で買いに行けば?」
「嫌。」
「なんで?」
「これから皆と『お遊び』しようと思ってるから。」
「・・・。」
ジト目でコトハを見る。
「何よ。」
「何人分?」
「そうね、私含めて6人分かしら。」
「・・・程々にしときなよ・・・?」

リュウザはベッドから降りると、勝手口にいたサエコに一声をかけて出て行った。


(そういやこのへんあんまし探索してなかったなー…。)
アイスを買うのを後回しにして散歩するリュウザ。
アイスが必要になるのは夕方だ。それまでは時間を潰しておいた方が良い。

何の気なしに歩いていたら、高校に辿りついた。
「ここ、確かショウゴさんの高校なんだよね・・・。」
ふと、潜り込んでみようか、という衝動に駆られる。
リュウザは学校という所と縁が無かった為、いざ目の当たりにすると興味が湧いてくる。

しかし、今日は都合が悪かった。なぜか校門の辺りが騒がしいし、学校全体が騒がしくて侵入するにはちょっと目立ちそうだったからである。
のんびり歩いて外周を一周すると、リュウザは再び歩いて行った。

途中で警官の姿が見え、リュウザは何か言われるかなぁと内心で思った。
学校に行っていないとは言え、格好が格好である。2、3小言等を言われる事も覚悟したのだが、ついに全く何も言われること無く通り過ぎて行った。
(・・・いかせのごれに常識は通用しない、の範疇なのかな・・・?)
そんな事を思いながらまだ歩く。

角を曲がった所で、リュウザは奇妙な光景を見る事となった。

「・・・ロボット?」
既に動かなくなったロボットのようなモノ。なぜか、所々に星の形をした何かが刺さっていた。
「コレも常識で考えちゃいけないいかせのごれの特性なのかな・・・。」
星形をしたモノの色は、どこまでも黒く暗かった。

不意に、角を曲がった所で女の子とぶつかりかけた。
「おっと、ごめんなさい」
対して少女は何も言わず歩いていく。
(目が死んでるなぁ…。)
リュウザの抱いた印象はそれだった。


夕方、コンビニで買ったアイスを持って帰って来ると、案の定中庭で出雲寺組員とコトハが息を切らしていた。
「お、ようやく帰ってきたわね駄犬が」
「五月蠅いよ。ホラ」
「サンキュ。」
受け取ると、手や足、首筋などに順番に当てて行く。
実践格闘のスキルを上げるには、実の削るような闘いを常に行なう必要があり、
そのためコトハはわざわざ挑発して組員数名と喧嘩したのである。
因みに色香を使うと相手の攻撃が鈍る為、やらないのだが…。

出雲寺組員にもアイスを配る。
「くっそ―…こんだけ人数いたら勝てるだろ普通は…」
「あのサエコとやりあって互角って事忘れてたぜ…」
口々に文句を言いながらアイスを痛めた部位に充てる。

そこに、ショウゴとアスミ、アキトが帰ってきた。
「…?」
首をかしげるアスミ。
「なんだ、お前ら喧嘩でもしてたのか?」
ショウゴは顔をしかめる。
「いいえ、違うわショウゴさん。してたのは実践形式の戦闘訓練。」
飄々とコトハが応えると、アキトが噛み付いた。
「お前ら何勝手にウチの組員を!」
リュウザがそれを停めた。
「大丈夫。誰も大きなケガはしてないし死んでないよ。」
「そういう問題じゃ」
「また襲撃があった時に、同じようにボコられるつもり?少しでも切磋琢磨しといて損は無いはずだよ。」
「宜しい。ならば、私達も訓練に混ぜて貰いましょう。」
「アスミッ!?」
「組長さん!?」

「私に何も相談せずにこんなことした罰です。全力でやらせていただきますよ。」
コトハの顔がごく僅かだが引きつった。リュウザは諦め顔で首を振る。


結局リュウザは氷嚢を借りる事になった。コトハは先に寝てしまったようだ。ショウゴが座椅子にもたれかかっている。
「ボコボコだったな。」
「空気は読みました。」
「練習にならんぞ。」
「雰囲気が悪くなるよりマシでしょ?」
「ったく。せめて俺にくらい言っとけっつの。」
「だってショウゴさんバラしちゃうでしょ?」
「まぁな。」
ショウゴも眠いようだ。モデルガンを腰から外して脇に置いている。
「引き続きやってくれ。んじゃ、寝る。」
座椅子を倒すと、ショウゴは横になった。
リュウザは電気を消すと、深い眠りに落ちていった。

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最終更新:2012年03月09日 16:57