-ストラウル跡地-
「…?」
パニッシャーを全て破壊し、理人と少し会話をしていた海猫は、どこからか何かが崩れた音が響いたのを耳にした。
「どーしたの?」
「あ、いや…」
頬をかく海猫。
(また誰かが襲われてんのかな…)
もしそうだとしたら、守人として放っておく訳にはいかない。
そう思った海猫は車椅子の方向を変える。
「海猫?」
「悪いけど、しばらくどっかで待ってて。必ず戻るから」
「え、ちょ―――」
「佑をよろしくね!」
理人の言葉を待たず、海猫は車椅子を走らせどこかへ去っていった。
(困ったなー…)
しかしどうする事も出来ないので、とりあえず一角のビルの中で海猫を待つ事にした。
-いかせのごれ某所-
(くっ…)
先程の三人組から逃げるべく、交番から離れた
ヴァイス。
しかしそう簡単に見逃す訳もなく、三人組は彼の後を追いかける。
路地裏に逃げ込む、と。
「―――!」
三人組の内、面をつけた少女―――今は狼を模した面をつけている―――が壁をハイスピードで掛け、ヴァイスの前に回り込んだ。
よく見ると所々に茶色の毛が生え、耳が犬のそれに変化している。
後ろにいる、マスクをつけた少年が言った。
「お前がヴァイスだな?」
「…もしそうだとしたら、どうするんです?」
「お前を『始末』するのサ!」
少女が駆け出した。
鋭く伸びた爪をヴァイスに向ける。
だがヴァイスはそれを容易く避けた。
「おやおや、物騒な」
「お前が言うかねえ」
「!」
見上げると、この二人といた水色の髪の青年が宙に浮く銀の鉄柱の上に乗り、それより短い数本の鉄柱をヴァイスに向かって落としてきた。
「…ッ!」
避けるヴァイスだが、最後の一本が彼の頬を掠った。
すると今度は白い布の様なものが飛び交う。
「これは…包帯!?」
「ただの包帯ではないぞ」
それらを操ってるらしいマスクの少年が言った。
彼の言葉通り、包帯が当たった所には傷が出来たり切断されたりしている。
(包帯が刃物の様になってるのか…)
初対面である事もあり、苦戦を強いられつつあるヴァイス。
だが一つだけ策がある。
(この三人組がチームを組んでるのは間違いない)
ならば当然、そこには『繋がり』がある筈。
ニヤリと笑うと、ヴァイスは懐からナイフを取り出し、少年に向かって放った。
少年はそれを避け、包帯を手放すとそれに乗り、滑走するかの如くヴァイスの方へ駆けていく。
跳躍し、蹴りを入れようとしたその時。
ガシッ!
「! しまっ……ぐおっ!!」
足を掴まれ、壁に強く叩き付けられた。
その衝撃で体を起こすのに手間取る少年。
ヴァイスは彼の服の襟を掴み、マニピュレイトを発動する。
その途端、少年が脱力した様な態を見せた。
「お前! コハクに何をしたのサ!?」
「…その目で確かめてみては?」
と、襟から手を離す。
すると。
シュバァアッ!
『!?』
コハク、と呼ばれた彼の包帯が仲間の二人に牙を向けた。
突然の事に驚きながらも二人は何とかそれを避ける。
「コハク!? どうしたのサ!?」
「まさか…マニピュレイトを!?」
「ご名答。さあ、どう戦うのでしょうかねえ」
「卑怯者!!!」
「何とでも言いなさい。それよりホラ、後ろに」
「!」
少女が振り返った先には、無機質な目で包帯を振るうコハクの姿が。
「コハク…わっ!」
「何ボケッとしてるんだ尓胡!」
「ご、ごめん…」
仲間の青年に助けられた少女、尓胡は涙を目に溜めている。
「
シザキ、どうしよう…」
「泣いたって何の解決にもならないだろう!」
「じゃあどうしろって言うのサ!?」
「お喋りしてる暇はありませんよ」
『ッ!』
再び襲ってきた包帯を避ける二人。
そこでシザキと呼ばれた青年が、ヴァイスに向かって鉄柱を飛ばした。
が。
「な…ッ!」
鉄柱がヴァイスを貫く前に、包帯がそれを切り刻んだ。
「くそ、こいつを狙っても駄目か…ッ!」
「コハク…」
未だ涙を目に溜めている尓胡はコハクの顔を見つめる。
と。
「…?」
「…尓胡? どうしたんだい?」
「………何だ、そういう事か」
「え?」
「ごめんコハク…早く気付くべきだったサ!」
包帯に飛び乗り、コハクの元へ走り出す尓胡。
攻撃を避け、彼の元に辿り着くと―――。
ザシュッ!
「!?」
「な…?」
尓胡の爪がコハクの喉元を切り裂いた。
だが次の瞬間。
コハクの姿が人の形をした包帯へと変わった。
「み…身代わり!? いつの間に―――」
「全く…いつまで待たす気なんだと思ったぞ」
「!」
ナイフを手にし振り返るヴァイス。
だが反応が遅かったか、包帯の攻撃を喰らってしまった。
「ぐ…ッ!」
「さて、殺すべきだろうが…白波からの依頼の事もある。捕縛に留めておこう」
「白波…
白波 シドウの事ですか?」
「ああ、そうだ…ん?」
「…花弁、サ?」
視界に入ってきたのは、水色の花弁だった。
と。
「…何か、ねむ、くなって…き……た…サ…」
「尓…胡、何寝ちゃっ…てる…んだ……い…」
「まさ、か…仲間、が…………」
その場に眠り込む三人。
それを見たヴァイスは安堵の息をついた。
「助けを求めた覚えはありませんが…まあ感謝します」
「………」
物影から喪服を着た少女が現れる。
「確か名前は…澪でしたっけ。あのフード男のパートナーを務めている…」
「……うん」
「……何故怯えるんです?」
5mは離れた物影で微かに震えている澪に呆れるヴァイス。
「ごめんなさい………大人とか、背の高い人…苦手だから……ごめんなさい」
「…まあいいです。とりあえずこの場から去りましょうか」
依頼失敗
-いかせのごれ郊外-
「ひーまひーまー…仕事来ないかな」
プルルルル…
「んあ、電話だ。…はーいもしもし」
『どうも、周です』
「あーどうも周さん。仕事?」
『はい。本の挿し絵を描いて欲しいと』
「あーはいはい。て事は文はあるの?」
『出来てなかったら電話してません』
「あははーそりゃそーだ。じゃあファックス宜しくねー」
『分かりました、ナナさん』
「ちょっと、その名前は捨てたんだってば」
『あ、すいません…』
「…過去のウチなんて、恥でしかないんだから」
『………』
「とにかく、今のウチは―――
最終更新:2012年03月18日 13:49