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揺らぐ視界、揺れる心

…そういえば、天気予報で夜から雨と言っていたな。
ぼんやりと霞みがかった頭で、佑はそう考えていた。

理人に連れられて帰り道を急いでいると、ぽつぽつと雫が落ちてくる。
家につく頃には、すっかり本降りになっていた。
濡れずに済んだのは、理人がナップザックから折り畳み傘を出してくれたおかげだろう。

「……わざわざ送ってくれて、ありがとうございました」
「気ーにすんーなー」

玄関前で理人に向かってお辞儀をする。
理人はひらりと手を振ると、傘を軽く回し、踵を返してどこかへ行ってしまった。

「………」

雨の中消えていく理人の後姿をぼんやりと見つめる。
普段ならもう少し気の利いたこともできそうだが、今はとてもじゃないがそんな気力は残っていなかった。

家の明かりはついている。太陽が帰ってきているのだろう。
鍵が開いていることを確認して、扉を開けた。

「……ただいま、タイヨーさん」
おかえり。…遅かったな」
「……ごめんなさい。ちょっと色々あって……」

何かを隠すように言葉を濁す様子に、太陽は怪訝そうな表情を見せる。
が、それ以上の詮索はしてこない。それが今の佑にはありがたかった。

「今、ご飯作りますから…」
「いや、いい。食べてきた」

台所へ向かおうとすると、呼び止めるように太陽の声が聞こえ、立ち止まる。
振り返ると、咄嗟に口から出たのだろう、少し驚いたような表情の太陽が目に映った。

「……タイヨーさん?」
「俺は…外で済ませてきたから。だから、いいよ」
「……そうですか?じゃあ…今日はご飯、作らなくていいですね…」

軽く頷くと、ふらふらと進路を変えて階段を上っていく。

「佑?お前、飯は…」
「私、いらないです……。今日、疲れたので…もう寝ます……」

疲れたように返すと、太陽の方も見ずに自室へ向かっていった。


部屋に入ると、鞄を机の上に置き、ベッドに体を投げ出す。
スプリングが軋み、柔らかな毛布に身体が沈むのが心地いい。

(……今日は、とても疲れた……)

頭も体も限界を訴えている。
理解を超える出来事が、多すぎた。

(…海猫、無事かな…)

公園にいると連絡してからそのまま帰ってきてしまった。
何処かへ行ったらしいと聞いたきりだが、どこへ行ったのかも何をしているのかも知らない。
明日学校で会えたら、きちんと質問しようと考えながら、目を閉じる。

窓の外の降りしきる雨音を子守唄に、いつしか佑は眠りについていた。


揺らぐ視界、揺れる心


(そして翌日)
(前日の反動か、夕方になっても佑が目覚めることは無かった)

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最終更新:2012年05月20日 19:26