「……随分と壮観だな。これだけの面子が揃うとは」
跡地に集まった顔ぶれを見て、ゲンブは溜息混じりにそう言った。たった今入口の方から突っ走ってきた車椅子の少女・海猫が応えて、
「まあ、色々と複雑な事情みたいだけど」
「複雑な状況、の間違いだろう、海猫。……そもそも、なぜお前達がここにいるのかもわからんのだが」
「それは……闊歩のことで、ちょっと」
「すまんが、今は聞いている余裕がない。とりあえず、
レストランに戻れ。俺もしばらくしたら向かう」
「すまんな、待たせた。送ろう」
「あー、すいません」
「では、よろしくお願いいたします」
二人が頷くのを確認して、アルマに指示を下す。
「アルマ。俺はこの二人を送った後、その足でレストランに向かい、報告を受ける。お前はここに残り、状況説明を頼む」
「了解」
無機質な返答を受けた後、ゲンブは二人を連れて跡地を去った。闊歩と由衣は半ば肩すかしを喰らったような顔をしていたが、ややあって「……戻るか?」「そうだな」と言い交し、スクーターを吹かして立ち去った。
残った二人の内、海猫がしげしげとアルマを見る。
「……何か」
「いや……あんたが噂のアルマさん、か」
外部協力者の海猫も、アルマのことは聞いていた。素性
その他が一切不明な、特別調査員兼連絡員。IUCチーム監督官補佐。
そのアルマが、今こうして目の前にいる。
「……言っておくが、俺について話すことは何もない」
「それは安心していいよ。無理に聞く気はないから」
「そうか」
それだけ話すと、再び場に沈黙が流れる。
「…………」
「…………」
しばらくそんな状態が続いていたが、ややあって海猫が口を開く。
「……ところで、ここで何が? アンタもやたらボロボロだけど」
「外部協力者の暴走だ。我々はその対処のために動いている」
「協力者?」
「
崎原 美琴という。何者かによる影響を受けているらしい」
「え!?」
思わぬ名前に海猫が目を剥いた。美琴……学校の後輩が? 確かに何度か肩を並べたことはあるが……。
「暴走って、何でまた」
「それは――――」
「
ヴァイス=シュヴァルツ。聞いたことくらいはあるでしょう?」
不明だ、と言おうとしたアルマの機先を制するように、その声が割り込んでいた。
「うお!?」
「おわっ!?」
突然二人の前に現れたその少女……
夜波 マナは、ちらりと海猫に視線を向ける。
その海猫は、当惑するより前に聞き捨てならない名前に反応し、身を乗り出す。
「ヴァイスって……あの愉快犯が!? どういうこと!?」
「美琴さんに能力を使って暗示をかけた。周りの人達がみんな、美琴さんを邪魔に思っていると」
つまりはいつもの、人間関係破壊。ただし、今回は些か以上に上手く行っているようだ。
「本人がやったのはただ、それだけ。だけど、それだけのことで、美琴さんは自分で自分を追い詰めつつある。このままだと、止まらなくなる。そうなったら、私たちは……」
その先は言わなかった。だが、言わずとも、二人にはわかった。能力者の暴走を止める最後の手段は、一つ。
「そんなことをさせてなるか……! 何としても助ける!」
「こちらもそのつもりだが、所在はつかめているのか?」
アルマの問いには、マナは首を振る。
「さっき、ヴァイスを追っていた3人組を保護した。やられたみたいで、結局見失ってしまった。今は星さん達が見ている」
「では振りだしか……」
どうしたものか、と腕を組むアルマだったが、何気なく見上げた視界に映ったものがあった。
「ん?」
それは、ビルの屋上。さっき見た少年と、もう一人はアースセイバーの同僚。
「……霧谷三佐?」
「……酷ぇな、こりゃ」
時同じくして、流也達。倒れていた3人は星達に任せ、物音がした方へはマナが向かったため、司と冬也を連れ、先ほどまで美琴がいた場所に向かっていた流也が見たのは、木端微塵になった
パニッシャーと、全身ボロボロで虫の息の学生。
「こいつ……崎原や張間たちをいじめてた奴だ」
「ま、まさか、崎原さんが……?」
信じられない、否信じたくないと言った面持ちの冬也だったが、現実がそれを許さない。堅い面持ちで、流也は言う。
「……死にゃしねぇが、ほっとくのもマズいな。
サクヤ姐さんに頼むか」
「ハイ、呼んだ?」
突然背後からかけられた声にも、流也は動じない(冬也と司は飛び上がらんばかりに驚いていた)。
「姐さん、聞いてたんなら話は早ぇ。こいつ頼むわ」
「いいわ、任せて。……でも、時間かかるわよ? それに、この子一般人じゃ……」
「わかってるんだが、今のこっちは時間が惜しい。頼む」
難しい面持ちのまま、サクヤはその学生を抱えて姿を消した。
「い、今の人はいったい……」
「俺の古い知り合いだ。後で話してやるよ」
当面の問題が片付いたところで、さて、と流也は気を引き締める。
「ヤツも、崎原って子も見失ったか……」
「どうしますか、流也さん」
司の言葉に、少し考え込む流也。だが、この状況下では下手に動くと事態が悪化する。とはいえ、放っておいても好転しないのは事実。
「……捜索を続行するぞ。このままほっとくわけにゃあいかねぇ。冬也、頼めるか」
「……わかりました。何としても……」
決意を新たにし、「ハイパースキャン」を発動する冬也。最大射程距離、45kmまで一気に視界を広げ、負担をこらえつつ美琴の姿を探す。いかに足が速くとも、この短時間ではハイパースキャンの範囲から出ることは出来ない。
と、
「!!」
やはり、範囲内に美琴の姿を見つけた。ただし、
「これは……」
進路変転
(縺れ合う道が)
(一本ずつ解けていく)
(残ったのは、最初の道)
「あ、そうそう、ゲンブさん」
「?」
「よろしければ、こちらのお宅へご案内いただけませんか?」
最終更新:2012年05月20日 19:33