某所。
(アイツ…血相を変えて一体どうしたんだ?)
黒で埋め尽くされ、ただ目の中に白い瞳を持った少女、
ヴェンデッタは先程別れた男の様子を思い出していた。
(誰かと話していたみたいだが)
指を顎に当て、唸る様に悩むヴェンデッタ。
「………」
(…ゲンブ)
(何だ?)
(お前には家族はいるか?)
(………)
(………)
(…俺はお前と違って、赤の他人に自分の事を話すつもりなど無い)
(…そうか、すまない)
(アイツも家族を失ったのだろうか)
彼女の脳裏に一つの記憶が浮かんだ。
まだかつて、自らを裏切った主君につく前の記憶。
山奥の動物と遊ぶ妹と、それを微笑ましく見守る自分。
もう、永遠に戻る事の無い記憶。
「白羽…」
今は亡き妹の名前を呟く。
やがて声は風に溶けていった。
「……よし、行くか」
マントを翻し、目指すべき場所へ向かい出す。
目的地は―――”北”のいる場所。
復讐者、北へ向かう
(気紛れなどではない)
(我はただ)
(心配なだけだ)
最終更新:2012年05月20日 19:40