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朱雀と朱鷺がデートするお話「答え」

 思えば、鳥さんと私の関係ってだいぶおかしい気がする。
ウスワイヤとホウオウグループ、その二つがどのような関係にあるかだなんて、私自身よく知ってる。
ウスワイヤにとっては必ず倒さなければいけない相手、だ。必ずは必ず、絶対、100%倒さなきゃ駄目。
対して、ホウオウグループには障害で振り払わなければいけない。彼らと相入れる事は恐らくないだろう。
それを踏まえて鳥さんにホウオウグループに入れだの理解しろだの言っても、きっと無理な話だ。
でも、それは当たり前のこと。
だって、鳥さんの人生を狂わせた上に大事な人達を奪った相手を許せだなんて私にだって出来ない。
父親を許せと言われてるようなものだ、無理無理。
それなのに、二人ともお互いのことが好きだなんておかしいよね。
将来的には、必ずどちらかが消える筈なのに。


「…トキコ?」
「えっ?なに、鳥さん?」
「いや、…なんだかぼーっとしていたから…少し休もうか?」
「そんな!大丈夫っ、それより早く、えらぼ!」
「あ、あぁ。」


 どうやら私はブレスレットを手に取ったまま、そのまま考え込んでいたようだ。
いけないいけない、今はデート。もうポリトワルの方は済んだんだし、普通に楽しまないと!
ということで、今私達はスノーエンジェルに訪れているのだ。
ここには北欧雑貨の他にもアクセサリーなどが置いてあり、女の子にも大人気のお店である。
以前、エミちゃんとウミちゃんとスノーエンジェルに来た時、鳥さんに似合うアクセサリーがあったのを思い出し、
早速今日、鳥さんを連れてきたのだ。
…その時は普通にお買い物だったよ、ホントだよ?


「(うーん、どれだったかな…)…あ、これこれ!鳥さんこれどう?」


 そう言って私が差し出したのは、赤い石が埋め込まれた銀色のブレスレットだ。
女の子っぽい、というよりもデザインは若干男の子向けだからクールな鳥さんにはぴったり。
しかし、鳥さんは何故か一瞬、動きが止まり、黙ってしまったのであった。


「鳥さん?」
「…シンプル、で良いと思う。けど、…その、」


 その表情は明らかにおかしいし、若干暗かった。
こういうのもいいんじゃないかな、とストラップを私に見せてきたけど、その前に少しだけ見せた、
手首を押さえた動作を私は見逃さなかった。
手首に対して何かトラウマでもあったのだろうか。
…そういえば、鳥さん腕時計とか持ってなかったよね。


「………」
「トキコ?」
「…ううん、こっちがいい。駄目?」
「駄目、じゃないけど…」
「付けるのが嫌なら、持ってるだけでいいよ。ね?」


 我ながらあざとく、首を傾げて鳥さんにおねだりしてみたら、苦笑しながら頷いて受け取ってくれたのであった。
今はきっと無理かもしれないけど、いつか付けてくれるといいな!
そんな淡い期待を抱きながら、同じデザインの物を購入して、私達はスノーエンジェルを後にした。





「うわー!冷たい!」
「トキコ!そんなに近付くと波が…」
「アーッ!!」
「………」


 空はすっかり夕焼け色に染まり、水平線の向こうは太陽の光でキラキラと輝いていた。
デートの最後に来た場所は海岸で、私が無理矢理鳥さんを連れて来たのだ。
ちなみにこの近くに村長さんの家があったらしいけれども、私はまったく知らなかったのは内緒。
鳥さんの警告を聞かずにものの見事に塩水を被ってしまった私は、波打ち際で尻餅を付いていた。
服もずぶ濡れで、肌に張り付いて気持ち悪い。カバンを近くに置いてからでよかった。


「大丈夫?」
「大丈夫っぽく見えるー?」
「…全然。」


 律儀に靴を脱いでズボンを捲って海に入ってきた鳥さんは、私に手を差し出してそう言った。
無傷な状態が無性に悔しくて、私は思わずその手を力任せに引っ張って、鳥さんを海へと引きずり落とした。
ざっぱーん、と豪快な音と共に突っ込む鳥さん。


「っトキコーーーー!!!!」
「あはははははは!!!!」


 私と同じようにずぶ濡れになってしまった鳥さんは顔を上げると、それを合図に私は逃げ出した。
きっとすぐ捕まるであろう鬼ごっこ、なんだか思ってたより楽しくて、ずっと続けばいいのにだなんて、
つい頭のどこかで考えてしまった。
力強く手首を掴まれ、その勢いで身体が前のめりになったけど、私の足は止まった。
ぜぇぜぇ、と息を吐く鳥さんは、一旦大きく息を吸って、それから吐いた後、


「捕まえた。」


 と言って、少しムッとした表情を浮かべたが、すぐに笑顔を浮かべた。
束の間の逃走劇は、これにておしまい。
私達は手を繋ぎながら、荷物が置いてある場所まで歩いていった。
歩きながら、私は鳥さんに話しかけた。


「あのね、鳥さん。」
「ん?」
「私、海行ったことなかったんだ、今まで。」
「…そうか。」
「うん、だから今日来る事が出来て良かった。」
「また、来ればいいじゃないか。」
「…来れるかな、また。」
「………」


 そう言ったら、鳥さんは黙ってしまった。
私も、そのまま黙り込んだ。
…終わりを考えるだなんて、らしくないよね私。


「来れるさ。」


 凛とした鳥さんの声。


「今度は、皆で来よう。」


 振り向いたら、鳥さんは優しい笑顔を浮かべて私に言った。
それが夕陽よりも眩しくて、温かくて、なんだかとても安心した。
でも、何故か喉がつっかえて上手く声が出せなかったから、私は頷いて返事を返した。





夕暮れはあっという間に暗闇を帯びて、もうすぐ夜がやってくる。
鳥さんが私をうちまで送ってくれるそうなので、その言葉に甘えて、私達はまた歩いていた。
…そういえば、大事な事忘れてた。


「あのね、鳥さん。」
「ん?」


 先程と同じように声をかけて、一つ間を置いた後、ちょっとドキドキしながら私は告げた。


「この前の返事なんだけどね?」
「…あ、あぁ…」
「やっぱり、私はホウオウ様が好き。」
「…そう、か…」


 やっぱり予想通り、鳥さんの声はどこか落ちていた。若干、繋いでいた手の力も緩んだ気がするし。
でもね、と私が言葉を続けると、少しだけ鳥さんの身体が強ばった。


「鳥さんも、好き。」
「え…」
「だから、優劣とか順位とか、そういうのは付けられない!
私は鳥さんが一番好き、その気持ちには変わらない。」
「…トキコ…」


 ホウオウ様も、鳥さんも大切。
だから私は、ありのままの答えを鳥さんに伝えた。
選ぶ必要はない、その影さんの言葉を信じて。
少しだけ反応が怖かったけど、鳥さんは追求も何もしないで、私に一言をくれたのであった。


「…ありがとう。」











朱雀と朱鷺がデートするお話
「答え」





(その答えに彼女の全ての想いが込められていた)
(…と、思う)

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最終更新:2012年05月27日 10:49