「ね、ねぇ夕重ちゃん…リオト君が、あのリオト君がお昼にお昼食べてないよ…」
「ん?そんな馬鹿……な…、ほ、本当だ…!明日雪でも降るんじゃないのか…!?」
―――ユウイが、笑ってる。
それは、とてもとても嬉しいことだけれど、その笑顔は決して自分に向けられているわけではない。
そう考えただけで何か黒い、モヤモヤとしたものが心を満たしていく。
アオイの奴はオレからユウイを取ったりしないと言っていたが…やっぱり…。
「悔しい…!」
どうしてもこの教室で飯を食う気にもなれずパンの入った袋を持って廊下に出た。
アオイのあの言葉を信じていないだとか、そういうわけじゃない。
ただ、あの笑顔を、この数年間見続けてきた笑顔を、
「嫉妬だな」
「でぇいッ!?」
気が付けば後ろに
アザミ先生、いや、リンドウの奴が立っていた。
リンドウ、オレと同じホウオウグループの人間で、奴もまた特殊能力者だ。
ホウオウグループ内では性格の荒いリンドウ、学校内では優しい性格のアザミ先生、二つの性格を器用に使い分けている。
すごいとは思うが、こっちは調子が狂ってしょうがない。
「リオトはいつもあの女の子と一緒にいるだろう?でも今日は違う、しかも眉間にしわが寄ってる。答えは一つしかないよね?」
「……う」
「ほんと、あの子が好きなんだねー」
「やめろ言うな」
「なんでだい?好きなら好きでそれさらけ出しておけばいいのに」
「…自分から言うのはそこまでだけど、人から言われるのは恥ずかしいんだよ!」
「ふーん」
――しまった、思わずムキになってしまった。ガキじゃあるまいし。
「じゃあさっさと告白しちまえばいいのに」
うわ、こいつ『リンドウ』になりやがった。
「長年の付き合いなんだろ?いけるんじゃねーの」
「……そうしたい、けど」
「……けど?」
そこで言葉が詰まり、オレは俯いた。近くにあった壁にもたれ掛かる。
リンドウはきっと、「度胸のない奴」そんなことを言いたげな目でオレを見ていることだろう。
多分、おそらく、ユウイに告白して、そこでOKなんてもらってしまったら、オレは自分を抑えきれなくなるだろう。
今まで以上に、常に傍に近くに、置いておきたくて仕方がなくなる。下手をすれば取り返しのつかないことだってしてしまうかもしれない。
今までも、何度も考えてきた。「あいつの血はオレみたいに赤いのかな」だとか「痛いのかな」だとか。その度に「それは駄目だ」と奥にしまいこんできた。
『幼馴染』という一線を越えてしまったら、オレはそれを全て「やってしまう」かもしれない。
だって『恋人』ってのはお互い、お互いのことを好きになってなるもんだろ?好きな人からされることはなんだって嬉しいだろ?だから…。
―――あれ?オレは何が言いたいんだ?何を思ってるんだ? ユウイを、殺し自分の…いやいや、有り得ない、そんなことあっちゃいけない。
おいおい、何を考えてるのか自分でもわからなくなってきたぞ。ただ、オレはあいつを守りたくて、血とか、そんな。
「おい」
「はぁッ!?」
壁をドンと叩かれて我に返る。そうか、リンドウいたんだった。
「度胸ねぇなぁ、あんた」
なんだよ、オレのこと知ったような口利きやがって。
「いいか?女ってのはな…」
「アザミ先生ー!一緒にお昼食べませんー?」
「あ、玉置先生!食べます食べますー!もうお腹空いちゃってー!」
けろっといつもの『アザミ先生』に戻ると、幸せそうな顔で音符を撒き散らすような勢いで保健医の玉置先生のところへ走っていってしまった。
……少し、「経験豊富者」の話、聞きたかったかもしれない。
やっぱり、嫉妬せずにはいられませんよね
「あ、リオトだ。今日は一人なんだ」
「オウカか……って何その缶ジュースの山」
「いやートバネと賭けしたら見事にボロ負けでさぁ!ひゃっひゃっひゃ。今日こそ勝てると思ったんだよー」
「……はぁ」
「どうしたのさそんな大きなため息ついて」
「いや、馬鹿は楽でいいなと思って」
「な、なんだとー!どういう意味だよー!」
最終更新:2012年05月29日 00:42