ドアを開けた瞬間、由衣は玄関に倒れ込んだ。
服は破れ、体中が打撲や擦り傷だらけだ。額からもわずかに血を流していた。
驚いた奏は由衣に駆け寄る。
「お姉ちゃん!?大丈夫!?」
「…いつもよりは、駄目かも;」
「どうしたの、その怪我…。」
怪我をするのはいつものことだ。
由衣はあまりいい子とは言えない。俗に言う不良だ。
それも関連し、ほぼ毎日のように男に交じって喧嘩をして帰ってくる。
それを奏はなれた手つきで手当てをしていくのがいつものことだった。
両親が亡くなってからは借金取りとも喧嘩をしあい、怪我がひどくなっていった。
しかし、今回は何かが違う。
「…奏、ここはもう…やばい。」
由衣が怯えてるように見えたのだ。
小刻みに震える肩を、奏が押さえる。
「おちついて、なにがあったのか、ゆっくり話して。」
「…ああ。」
由衣は深く数回息をはくと、まっすぐ奏を見た。
喧嘩自体はいつも通りだった。
古びた倉庫での集団の喧嘩。
慣れてる由衣は、武器もものともせずに果敢に立ち向かっていた。
しかし、それは突然だった。
不意に後頭部に衝撃が走った。
後ろから襲ってきた者に、鉄パイプで殴られたのだ。
そのまま前に倒れ込み、起き上がれなくなる。
目の前の赤い液体は…血?
体が動かない。視界がぼやけてくる
…もしかして…死ぬ…?
どうにもできないまま、彼女の意識は闇へと堕ちて行った。
――――――――――
…変だ。
静かすぎる。
再び目の前に広がった世界は、倉庫のままだった。
どうやら「あの世」とかではないらしい。
ただ、違うというのなら。
相手側が皆倒れてる。
そして、壁には無数の鉄柱が。
倉庫にこんなにも鉄柱はなかった。
運ぶにしても多すぎる。
何があったのだと、彼女は痛む頭を押さえて起き上がった。
その時だった。
何の前触れもなく、倉庫が爆発した。
「!!??」
持ち前の反射神経でなんとか爆破に巻き込まれずに済んだが、咄嗟に飛びのいたせいでいたるところに怪我を負った。
彼女は火の海と化した倉庫を見やる。
あの中には、まだ何十人もの人間が…。
「…ちっ、はずしたか。」
「!」
声の方を見やる。
緑色の髪の女性が、こちらを見ていた。
見つめる赤い瞳の中に無に帰す「黒」と燃やしつくす「赤」、絶対忠誠の「青」を見た由衣は、本能的に悟っていた。
――こいつ、やばい―――
有無を言わずに走り出した。
よろけながらも、奏に伝えようとしたのだ。
この身が消えようとも。
妹の無事のために。
「すぐに離れよう、この街を!もうここにはいられない!」
「元々借金取りに追われていたんだ。この家も売り払わなきゃいけなかっただろう。ならいっそこのままここを離れよう!」
「何言ってるのよ!ここはお父さんやお母さんとの思い出の…。」
「忘れてないぞ、奏。お前も半年前に同じ経験をしたはずだろ!」
「!」
借金取りに追われているのは今に始まった話ではない。
両親が生きていた時も、追われていたのだ。
そしてそれが度を過ぎ、実力行使になった。
たまたま出ていた由衣が帰ってきたときには、借金取りも、両親も死んでおり、奏だけが部屋の中心で泣いていた。
借金取りにだけ共通して、首を絞められた跡があった。
そして、奏もまた、借金取りに首を絞められたといった…。
「絶対、ここにやばいもんが来る!だから…。」
「…分かった。」
奏は手当てを済ますと、鞄を由衣に渡した。
「今夜中に行きましょう。路上生活は覚悟の上よ。」
「…ああ。」
由衣は立ち上がり、小さな箪笥を開いた。
二人が
ケイイチ達と出会うのは、このすぐ後の話である――。
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最終更新:2013年06月13日 21:12