ある日のいかせのごれ高校、1年教室にて。
「………」
「~♪ ~♪」
無表情気味のサヤカの髪を楽しそうに弄っているのは、1年の双子の一人、
ミドリだった。
「…何してんの?」
「あ、もうちょいだから動かないで!」
「………」
「…出来たー! チャイナヘアー!」
「チャイナ…?」
「はい鏡!」
と、どこからか取り出した鏡をサヤカの目の前にかざす。
確かにサヤカの髪は二つの団子になっており、チャイナヘアーというべきものに違いなかった。
「サヤカ可愛い~似合ってるよ! セクシーチャイナガール!」
「………」
ぴょんぴょんと全身で喜びを現すミドリ。
しかし当の本人は。
バサッ
「アッー! 何で何で何でー!? 折角出来たのにー!!」
「別に頼んでないし」
「ぶー…」
不機嫌になるミドリ。
そこでサヤカはある事に気付く。
「…相方は?」
「ヒオなら図書室に本返しにいったよ」
「…あっそ」
「もう帰ってくる頃だけど…あっ、お帰りヒオ!」
「おー、ただいまミド。よっす、サヤカ」
「…ん」
「相変わらずノリ悪いなー」
「アンタ達が騒がしいだけでしょ」
サヤカは小さく溜め息をついた。
「そんなんじゃ青春くんが逃げるぜー!」
「逃げるぜー!」
「寧ろ大声上げるアンタ達から逃げてくわ」
「え、何でー?」
「何でー?」
「…その同じ返事すんのやめてくんない?」
「やだー」
「ヤダー」
「………」
そっぽ向くサヤカ。
それを見た二人は「ぶー」と膨れたが、すぐにいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「サヤカって好きなお菓子あるー?」
「は?」
「因みにオレ、クレープ大好きー!」
「誰もアンタの好み聞いてないから」
「テヘペロ☆」
「ウザいってば」
しかし調子に乗る二人はまた「テヘペロ☆」と茶目いた。
「ねーねー何が好きなのさー?」
「………コアラのマーチとか」
「おー! あちきも好きー!!」
「オレもー!!」
「あーそー」
棒読み気味に返事するサヤカ。
とそこでチャイムが鳴った。
「昼休み終わったな」
「終わったー」
「ならさっさと教室に戻れば、鬱陶しいし」
「戻るぜー? でもその前に」
「ん?」
二人はお馴染み、顔を見合わせてにんまりスマイルをするとサヤカにこう言った。
「放課後、オレらが来るまで…」
「ここで待っててよ!」
「はあ? 何でよ」
『ふっふっふ~』
「………」
「じゃあまた放課後ね! 絶対だよ!」
「絶対だぞー!」
「………何なのよ一体…」
「………」
サヤカはちゃんと教室で待っていた。
(…私何やってんだろ)
しかし、流石に約束(あちらから一方的にしたのだが)を放ってしまうのも可哀想なので、おとなしく待つ他無い。
「……………遅い」
15分は過ぎているだろう。
他のクラスメイトも帰ってるか、他の場所にいるかで、今ここにいるのは彼女ただ一人だけだった。
「やっぱりからかっただけなのかな。もう帰ろ…」
と立ち上がったその時。
『サヤカー!!!』
「!? えっちょ、うわっ!!?」
いきなり目の前に躍り出た
ヒオリとミドリによって、サヤカはうつ伏せに押し倒されてしまった。
「あははーごめーん」
「ごめーん」
「…のいて。重いし邪魔」
『はーい』
「……で? 何なの?」
「うん! ミド!」
促されたミドリは鞄からビニール袋を取り出す。
「何それ?」
「サヤカにプレゼント!」
「…もっとマシな袋無かったの?」
「まあまあ、中身見てみろよ」
「……!」
袋の中に入っていたのは、自身が好きだといっていた、あのお菓子。
しかも結構な数がある。
「……」
「サヤカびっくりー!」
「大成功ー!」
『イェーイ!』
大喜びでハイタッチする二人。
だが―――。
「……何のつもり?」
『?』
「私に優しくしてどうしたい訳? 良い人ぶってるつもり?」
「サヤカ?」
「どしたの?」
「私、偽善者とか嫌いなのよ。ほっといてくんない?」
第一この手じゃ食べれない―――そう言おうとした時。
『ぎぜんしゃって何?』
「……は?」
「それにオレら、サヤカの友達だよな?」
「うん、それにそれに友達ってこういう事するんだよね?」
「え…ちょ、え?」
「ねえサヤカ、あちきらとお菓子食べよ!」
「食べよーぜサヤカ!」
「………」
拍子抜けしたサヤカ。
すっかり双子のペースに乗せられてしまっていた。
「…あのさ、私…手使えないんだけど」
「じゃああちきが食べさせたげる!」
「え……でも」
「恥ずかしがらなくていいぞ?」
「…ていうか、これいつ買ったの?」
約束したのは昼休み。
その後買いに行く時間は無いはず。
すると二人はこう答えた。
『魔法の本で作った!』
「はあ? またそんな―――」
と、サヤカの瞳にミドリの鞄が映る。
ジッパーの隙間から除き込む古ぼけたハードカバーの本を見て、サヤカは言いかけた言葉を飲み込んだ。
確証は無いに等しいが、それでも彼女はそうだと気付いた。
二人の言う「魔法の本」がこれなのだと。
「…とりあえず、自力で食べれるから」
「無理しなくてもいいぜー?」
「いいよー?」
「平気だっつの。寄越せ」
「あいよ」
ヒオリがサヤカの手のひらにコアラのマーチを落とす。
サヤカはそれを口元に持っていくと、一気に食べた。
「おー」
「どう?」
「……美味しい」
「でしょー?」
「オレも食べる!」
「あちきも!」
「え、私へのプレゼントじゃないの?」
「食べたくなった!」
「それにいっぱいあるし!」
『ねー!』
「…はあ。もういいよ、勝手にすれば」
「やったー!」
「サヤカ大好きー!」
「ちょ! ミドリ抱き着かないでよ!!」
「ずっと友達ー!」
「友達だー!」
「…………」
サヤカはなんとも言えない気分で二人を見つめるのだった。
赤と緑とその友人
(…まあ)
(久しぶりに好きなお菓子食べれたし)
(一応感謝はしよう)
最終更新:2012年07月10日 20:52