アットウィキロゴ

移動中

ストラウル跡地から一度撤退し、火波家に戻ったアオイは、スザクの姿をした火波姉妹の母・琴音から話を聞いていた。
スザクの部屋で、ベッドに腰掛ける琴音が言う。

「一応、私の力について説明しておくわね」
「はい、母様……」
「エンプレス、っていうんだけどね。あなたとスザク、二人ともを守るための力よ」

そういわれて、アオイは思い至る。

「もしや、姉様が死なずに済んだのは……?」
「そう、この力よ。……まさか、こんな事態になるとはさすがに予想してなかったけど」

心底意外そうな面持ちで、琴音は肩をすくめる。
彼女が言うには、いつもの如く秋山神社で過ごしていたところ、スザクの命に危機が迫っているのを感知し、今までのような遠隔からの庇護では間に合わないと直感。ミナ経由でアカネに連絡し、全速力で自ら助けに向かったのだが、その時消えかけていたスザクの命を繋ぎ止めた代わりに、その体に取り込まれる形で憑依してしまったのだそうだ。

アカネがこれまた意外そうに言う。

「それにしても……まさか、ヒナちゃんとこんな形でもう一回出会うなんて、思ってもみなかったわ」
「それはこっちもよ、アカネちゃん」

琴音にしてもそれは同感らしい。二人とも一度は死んだ身だ、再会するなどまさに予想外であろう。
アカネの方は奇跡に近い偶然のおかげで生還したが、琴音の方は精神体となって存在していた。こうしてまた顔を合わせる機会があったこと自体、まさに奇跡というほかない。

ともあれ、と琴音が話題を戻す。

「スザクを助けるのにアカネちゃんの力を借りたのにも、ちゃんと訳があるのよ。ね、マナちゃん」

話を振られ、頷いたマナが口を開く。

「アカネさんの体には、血液に混じって高純度の生命エネルギーが流れている。私の力でそれを波動に変えて抽出して、スザクの双子であるアオイの体を介することで最適化し、最後にスザクに流し込んで傷を治癒させた」

つまり、アカネの持っていた力「フィジカルブースター」を応用し、琴音が「エンプレス」でしのいでいる間にスザクの生命力を補うことで、どうにかこうにか蘇生させた、ということになる。

「……まさか、琴音さんがスザクに憑依するとはさすがに予想してなかったけれど」

マナもまた、虚を突かれたような面持ちで琴音を見る。
スザクの体に乗り移った姉妹の母親は、困ったような顔になって言った。

「スザクはショックで奥の方に落ちたきりだし、起きるには時間がかかりそうよ。それに、私もこの体から出られないみたいだし」
『え?』

と三人分の声が重なった。一番先に口を開いたのはマナ、

「琴音さん……そういうことは先に言って欲しい」
「ごめんなさいね、マナちゃん。スザクを助けるので一杯一杯だったから……」

まあいいですけど、とため息をつくマナ。気を取り直したように顔を上げ、「さて」と3人を見る。

「これからどうする? 私はランカの家に行くつもりだけど」

言いかけたマナの肩を、アカネがつんつんとつつく。

「?」

振り返ると、咎めるような表情のアカネがいた。

「違うでしょ、マナちゃん。私の家、でしょ?」
「……そうでした。私は一度家に帰るつもりだけど、アオイと琴音さんはどうする?」

言われた姉妹、もとい母子は顔を見合わせ、

「ご一緒しますわ。ランカさんにもお話しておかなければ」
「同感ね。色々と話すべきこともあるし、ね」

それぞれ同意した。これを見たマナは、

「じゃ、善は急げってことで」

言うや、さっさと一人で先に歩き出してしまった。相変わらずのマイペースぶりに苦笑するアカネは、二人を先に行かせつつ携帯を開く。

「アカネちゃん、どこかに電話?」
「ランカに状況知らせないと。あの子も一応『スザク組』だしね」
「? そんなチーム、あったでしょうか……」

本気で首を捻るアオイに、「ランカが言ってるだけよ」と補足しつつ、アカネは家で留守番している長女に連絡を取る。

1コールしない内に繋がり、

『も、もしもし、お母さん!?』

何やら慌てたようなランカの声が聞こえてきた。切羽詰まっているようだが危機感がないのを読み取り、アカネは電話の向こうのランカに声をかける。

「落ち着きなさい、ランカ。何かあったの?」
『う、うん、それがね……』

言う背後で、

『スザクの姉貴に何かあったのか、おい!?』
『だ、だから、まだ詳しいことはわかっとらんのです』

などというやり取りが聞こえ、アカネは大体の事情を察した。

シュロちゃんが来てるのね?」
『うん……何か、綾ちゃんが危ないのか、って言ってるんだけど』

恐るべき直感。内心舌を巻きつつ、アカネは言う。

「今から帰るから、おもてなしして置いて。お客様へのマナー、大丈夫ね?」



移動中




同刻、いかせのごれ高校近辺。

「?」

一人歩いていたブラウ=デュンケルは、誰かの気配を感じてそちらを向いた。

「誰だ?」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年08月06日 14:22