「……何だ、このありさまは」
「あ?」
バリジャンを平らげた聖が外からの声に顔を出すと、いたのは啓介だった。
「何だ、てめえかよ。何の用だ?」
「あんたに用はない。真衣を迎えに来ただけだ」
「ああ、例の訓練かよ」
啓介の妹・真衣は「流れ」を操る特殊能力者だ。諸々の事情で現在は制御の訓練をしている状態であり、それを受け持っているのは獏也である。
「バクのおっさんだったら向こうだぜ」
「まだ時間が早かったらしい。外に出るところだ」
どうもフライングだったようだ。
「ところで、これはどうしたことだ?」
「こいつか……」
啓介が尋ねているのは、破壊されたドアのことだ。面倒そうに頭をかきつつも、聖は一部始終を語って聞かせた。一通り理解した啓介の反応は、
「どっちもどっちだな」
とのこと。
「けど、エマさんは上手くやったな」
「どこがだ!? 人の部屋のドアぶっ壊しやがって……」
「そうじゃなかったら、聖さんどうした?」
途中で遮り、畳み掛ける。
「エマさんが部屋の前に置くとかで終わらせてたら、ゴミ箱にでも捨ててただろ?」
図星だった。さすがによくわかっている。察したのか、啓介が大きくため息をつく。
「全く……何でそう捻くれてるんだ。能力者嫌いはわかるけど」
「……よ」
「え?」
「違ぇってんだ。俺が嫌いなのは『能力に驕るバカ』であってだな、『能力者』を一緒くたに嫌ってるわけじゃねぇ。だからってやることは変わらんがな」
じゃあ何なんだ、と自分でも何が問いたいのかわからない風の啓介に、聖は言う。最初の問いとは、全く関係のないことを。
「……俺の力は知ってるな」
「武器を呼び出す力……サモンアームズだっけな」
ああ、と一言置いて。
「それが、特殊能力でもなんでもない、って言ったらどうする?」
言われた啓介は一瞬面食らった。サモンアームズが特殊能力ではない?
「じゃあ……特異体質とか、異常才能とか?」
「ハズレだ」
それじゃあ何なんだ、と尋ねて来る啓介に、聖は「そうさな」と前置きして答えた。
「有体に言えば、機能だな」
「き、機能?」
「おう」
「生体兵器の、機能だ」
一瞬何を言われたかわからず、啓介は思考が止まった。が、それが動き出した瞬間、
「……はぁぁぁぁっ!?」
思わず叫んでいた。
「せ、生体兵器って、アンタ……」
「無論今の
ホウオウグループのだ。つっても初期の初期の初期、ウスワイヤが出来る大分前だがな」
つまりは「モンスターハンターズ」最盛期の頃らしい。
「大雑把に話すとだな……10代ン時に連れてかれて、改造された。んでデカくなった頃に
ケイイチ共が連中をブッ潰して、俺は逃げ出した」
「大雑把というか、省略し過ぎというか……」
「俺の力はそん時に組み込まれたモンだよ。んで、逃げた俺は身分を偽造して、社会に紛れて、いつの間にやらカルーアトラズで働いてたワケだ」
前の職場に話題を持って行ったところで、顔が渋くなる聖である。
「あー、それは聞いてる。シギとか言う人とマジで殺り合って辞めただっけな」
「おおよ。その後いかせのごれに飛び込んで、アースセイバーに入って、今に至るっつうわけだ」
話が終わったところで、啓介はようやく、聖の話の内容が、未だ誰も知らない彼の過去であることに気付いた。要点だけ抜き出した、かなり簡単なものだが。
「何でそれを俺に……」
「さあな。ただ、てめぇにゃ借りがある」
真衣の件のみならず、組んでいた時期には幾度となくフォローを受けている。その辺りもコミだ。
「……ま、アンタの過去は俺には関係ないけどな」
「だな。下らねぇことに時間を使っちまった」
それを最後に、啓介は腕時計を見ると踵を返し、真衣を迎えに行った。が、その去り際、
「聖さん、何か知らないけど『親』にはそこそこ気を使うよな? 何でだ」
「ああ、それかよ」
何のことはない、というように、ウスワイヤとアースセイバーきっての能力者嫌いは答える。
「親ってのは『生み出して、守る』存在だからな。ブッ壊してなくすしか能のねぇ俺からすりゃ、随分と上等な存在なんだよ」
(それは……?)
最終更新:2012年08月06日 14:30