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全ての序章

突然の来訪客に、獏也は眉をひそめながらもその者を応接室に通した。
その来訪客とは、つい先日訪れた水無瀬一族の頭領、水無瀬 斎である。

「突然すいません、何の連絡もなしに…」
「構わん。それで用件は?」
「あ、その前に……この前は、妹が申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げた斎を見て、獏也は面喰らった様な表情を浮かべた。

「……姉じゃなかったのか?」
「やっぱりそう思います?」
「まあ兄より背が高ければ、な。…あ、いや、すまない」
「ははは、お気になさらず。慣れましたから」

何だか悲しい言葉を言われた気がするが、当人は本当に気にしてないようなので、それ以上突っ込まなかった。

「あの子、いつもあんな風に喧嘩腰なんですよ。身内や仲間なら多少甘くなるんですが……」

苦笑気味に言う斎。

「何故あそこまで嫌うのやら……あ、僕自身は貴方達の事を敵視してないので、守人の力をお借りしたければ僕に言って下さい。なるべくバレないように人員派遣するので」
「ああ…すまない、恩に着る」
「いえ、何かを守る意志は同じですし」
「では改めて…用件は?」
「あ、はい。まずこれを見て頂きたいんです」

と、持っていた書類を獏也に渡す。
それを軽く見ていく獏也。
見終わったところで斎が本題を切り出した。

「今見て頂いた書類は、守人の行方不明者リストです」
「行方不明者?」
「ええ。ホウオウグループ出現もあってか、色々トラブルが続出しておりまして…特にメンバーが行方不明になる事態が、目立っているんです」
「ふむ……これは?」

と、1枚の紙を斎に見せる。
その紙だけ行方不明者の写真が無い。

「ああ…その行方不明者なんですが、まだ赤子の頃に誘拐されたらしくて、写真が無いんです」
「誘拐?」
「ホウオウグループの仕業かはまだ分かりませんが…生まれてまだ間もなく」
「そうか…」
「しかし問題なのはそれだけではありません」
「ん?」

斎の目が更に真剣味を帯びる。

「守人に移籍予定の能力者、弥栄 幸斗をご存知ですよね?」
「うむ。推薦したのは他でも無い、私だからな」
「まだ合格とは見なされてないので、今は大丈夫なのですが……実を言うと、合格と認められても守人になれないんです」
「…どういう事だ?」
「…守人達だけに備わる力がありまして、仲間とのテレパシーと力の共有なんですが…合格出来てもまだ守人ではないので、この力が備わらないんです。その事から、正式に守人として認められるには、『ある物』が必要でして―――」
「その『ある物』も行方不明になっている、と?」

察した獏也の言葉に、斎は少し驚きながらも頷いた。

「正確には、その赤子と一緒に行方不明となっているんです」
「というと…?」
「そもそもその『ある物』を管理していたのが、”いかせのごれの大魔術師”と謳われていたイハル殿なんです」
「何? イハルだと…?」

ウスワイヤに身を置く獏也もその名をよく知っていた。
”いかせのごれの大魔術師”イハル―――ありとあらゆる魔術を使いこなす、天才魔術師。
しかしある日。

「彼は何故自殺を…?」
「生まれたばかりの赤子を誘拐された上、妻のコモモ殿が気苦労で病を患い亡くなったからと…」
「…なるほど」
「…それはイハル殿とその血を継ぐしか扱えないのです。つまり彼がいない今、その誘拐された赤子しか使える人間がいません」
「見つけ出さないと、候補者がいつまで経っても守人になれない…という事か」
「はい。それでリストを見せた理由ですが…行方不明者捜索に協力してほしいんです」
「………総元締めからか?」
「いえ、僕の独断です」
「…やはりそうか」

ふっと諦めた様な笑みを浮かべる獏也。
斎をつられて笑った。

「僕らの大半が攻撃に特化した能力なので…それで、多種多様の能力者がいるウスワイヤに協力を仰ぎたく」
「なるほど……よし、分かった。任務の内に入れておこう」
「ありがとうございます。あ、発見や何かあれば僕に連絡下さいね。くれぐれも佳乃にバレないように…」
「承知した。正直、総元締めと話すと気疲れしてしまうからな」
「本当にすいません……」

溜め息をつきながら謝る斎。

「いや、お前が謝る事は無い。あの事態は予想がついていたからな」
「あの子も兄として僕を見ているのか、いささか疑問に感じております……はあー…」

斎の脳裏に強気な目をした妹の姿が浮かぶ。
そしてその妹とはいうと。

「…ックシュン! …誰か噂でもしてるのか?」


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「…ところで早速なんだが」
「はい?」
「『ヒロヤ』ならこちらで保護されているぞ」
「………えっ?」

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最終更新:2012年08月21日 23:16