「‥これは?」
蒼い瞳を持つ少女
クレアは昼前の街を歩いていた。
先ほど、レナの家を後にしたばかりで、今日は特に活動を行わず、帰る予定だった。
しかし、その道のひしゃげた車、引きちぎられたガードレール、陥没したアスファルトを見ては、それを無視して通り過ぎる事は出来ない。
現場の様子から、この惨事を引き起こした者の力の凄まじさを感じ取る事が出来る。おそらくは超能力者の、それも並のレベルではない強力な超能力者の仕業だろう。
「赤城‥明夢か?」
クレアには一人だけ、この惨状を引き起こすに足る力を持つ超能力者に心当たりがある。
『衝撃の悪夢』を操る赤城明夢。
衝撃を反射し威力を増大させる彼女の拳は成人女性の約200倍の威力を持ち、あらゆる衝撃の向きを操る彼女なら、これ位の惨事を引き起こすのは容易いことだ。
「(何が、何が起ころうとしている‥?)」
赤城明夢はこのような事をするような人間では無いはずだ。と、クレアの中の記憶が告げる。
大が付くほどの善人で、優しいという印象しかない。
ーチリン
鈴の音が鳴った。
「誰?」
クレアが振り返るとそこには‥
「赤城明夢‥いや違う。誰‥?」
一瞬明夢に間違えそうな位明夢によく似た少女が闇から湧いて出たように立っていた。
明夢が少し幼くなったような顔つきと、純白の髪、黒い巫女装束。
と、よく見ると明夢とはやはり違う所がたくさんある。
だが、目の前の少女と明夢では、外見だけでない、もっと本質的な何かに大きな差違がある。
「‥お姉ちゃんは、元気?」
「!?」
少女らしい高く可愛らしいくも抑揚のない平坦な声で少女が言う。
「私は、赤城夜夢。お姉ちゃん以外の、赤城家での最後の生き残り。」
答えかねるクレアに、少女夜夢は更に告げる。
「君は‥明夢が話していた、行方不明になった妹か?」
「うん、そう。」
「私に聞くより、明夢に直接会えば良いのではないか?その方が、明夢も喜ぶはずだ。」
「‥ダメなの。」
クレアの意見に、夜夢は首を横に振る。
「私は、もう普通の人間じゃないから。」
彼女の背中からおもむろに深い藍色の花びらのような翼が6枚生える。
翼とは言うものの、滑らかな表面は莫大な情報データを持つクレアでもそれが何の物質でできているか、判別できない。
「一つはこれ。一度私は死んだの。これは『ナイトメアアナボリズム』って超能力。私の『物質の悪夢』は存在しないはずの性質を持つ物質を生み出して操る事。だから、あなたの情報データでは検出することは出来ないはず。もう一つは‥」
夜夢は巫女装束を少しはだけさせる。
その胸元に刻まれた刻印。
それは‥クレアにも刻まれている刻印だった。
「私は
ホウオウグループの一員だから、もうお姉ちゃんには会えない。お姉ちゃんは私を止めようとするから。でも、お姉ちゃんの事、少しだけ気になるから、あなたに聞いたの。」
「‥明夢は元気だ。気苦労は耐えないらしいが。」
「そう‥良かった。ならいいの。お話したい事は、それだけ。」
いつの間にか翼をしまった夜夢はクレアに背を向け、もと来た道を帰り始める。
「ああ、そうだ。クレアお姉ちゃん。」
途中でふと何かを思い出したかのように夜夢は立ち止まり、振り返る。
「何?」
「あなたは、元々ホウオウグループに創られた存在だから。」
最終更新:2012年10月09日 22:08