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調教師とグリフォン

千年王国の拠点、ホウオウグループ支部施設内に存在する閉鎖区画。
その一画に、不思議と植物が生い茂っている区域がある。

「…………」

そこにやってきた花丸は、脇目も振らずにその区域へ足を進める。
芝生に足を踏み入れると、草が踏まれた音を察知したのか、奥から影が現れた。

「……ただいま、みんな」

集まってきたのは、大小さまざまな動物たちや生物兵器たち。
行き場がなく拾ってきた動物たちや、処分されかけた生物兵器を引き取って、この区域で世話をしている。
今日も学校帰りにスーパーで餌を買い、食事などの世話をしていると、

「はーなまーる、さんっ」
「わっ!?」

突然、軽い声とともに背後からのしかかるように体重がかけられ、勢い余って前につんのめった。
何とか体勢を立て直して慌てたように後ろを振り向くと、体重をかけた犯人を見て少しだけ声を曇らせる。

「……イマさん。いきなり体重かけるの、やめて」
「すんませーん。こうしたら、花丸さん潰れるかと思ってw」
「…やめて」

千年王国の構成員で、生物兵器でもあるイマが、花丸にのしかかりながらニカッと笑った。
元からの性格か、ホウオウグループ製の生物兵器であるため能力の影響を受けやすいのか、彼は花丸によくちょっかいを出す。

「なあ花丸さん、埋めていいっすか」
「ダメ」
「えーwいいじゃないっすか、ちょっとぐらいー」
「ダメなものはダメ」
「えぇー」
「えぇ、じゃないの。我慢して」

隙あらば自分を埋めてこようとするイマを軽く押して離れさせると、木に寄りかかって座り込む。
そこで初めて、今は花丸が泥だらけであることに気づいた。
制服の上着も丸めて抱えられており、白いシャツにはところどころ靴跡らしきものも見受けられる。

「花丸さん、どーしたんすかソレ」
「……何でもないよ。知らない人たちに、蹴られただけ」
「何でまた」
「…さあ。僕が気に食わなかったんじゃないかな。生意気で」
「ふーん…」
「…だってあの人たち、この子をいじめようとしてたんだもん。だからついカッとなって…」
「この子?」

よくよく見ると、丸められた上着の中には、何かが包み込まれているようだった。
その中から顔を出したのは、

「キキィーーーーッ!!」

「………………何すかこれ」
「サル。多分、外国の種かなぁ……何処かで飼われていたのが逃げたのか、捨てられたのか……」
「キィッ!!!ギーーッ!!!」
「……むっちゃ暴れてますよ」
「…警戒してるんだよ。僕のことも怖いみたいだし……」

花丸の腕の中にいたのは小柄で細身のサルだった。
余程暴れたのだろう、そう呟く花丸の顔やゴーグルは引っかき傷だらけだ。
両手なんかは、現在進行形で新しい引っかき傷や噛み傷が増えていっている。

「逃がしてやりゃーいいんじゃないすかね、それ」
「うん……そのほうがいいのかもしれないけど…この子も怪我してるし、それが治るまでは…。また心無い人たちに襲われないとも限らないし…」

自分のほうがはるかに傷だらけだろうに、サルの心配をする花丸に、イマは軽く肩を竦めた。

「お人好しっすね、花丸さん」
「………僕が優しいのは、動物たちだけだよ」

暴れ疲れたのか大人しくなったサルを撫でながら、花丸はそっと微笑んだ。


調教師とグリフォン


「で、その上着、ボロボロっすけどどうするんすか」
「……どうしよう…」

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最終更新:2012年11月15日 19:37