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一歩前進、帰還の知らせ

※前に投下した「愛を見出だす『話』」含め、これから「話」がつく自小説は全て守人の物語の連載です。


「えっと…保護されているとはどういう事ですか?」

獏也に「ある物」と行方不明者の捜索を依頼する為、ウスワイヤに訪れた水無瀬一族の頭領、水無瀬 斎は彼の言葉に耳を疑った。

「そのままの意味だ。…ヒロヤは特殊能力者と判断、保護された」
「そんな、まさか。彼に特殊能力は無かった筈! それに基本守人は――」

そこで言いかけた時、斎は何かに気付いたらしくハッとする。

「ああ、そういえばナオトキ様…彼にはまだ言っていなかったのか…」
「ナオトキ?」
「ヒロヤさんの祖父です。能力者ではありませんでしたが、第一世代でもトップクラスの強さでした」
「ふむ…しかし、彼は自分が特殊能力者である事を認めていたが…」
「何ですって?」
「最初こそ拒否はしていたが、すんなりと」

その言葉に斎は呆気に取られた。

「いくら自身が守人なのを知らないとはいえ何故…そもそも保護に至った訳は?」
「アースセイバーの者が、任務で窮地に陥った際に彼に助けられたのが…その時の強さが異常で半端無かったという」
「確か…ナオトキ様は彼らに自らの技術を全て伝授したと、父上が…」
「…彼ら?」

斎の言動に違和感を感じた獏也。

「ああ。実はヒロヤさんには、腹違いの妹がいまして…」
「妹?」
「ええ、お母様が外国の方なのでハーフという事なんですが…今は修行としてとある軍にいます。彼女は自身が守人なのは知っていますけど…」
「? 何故妹だけが?」
「まだ幼い頃、ナオトキ様の行動が気になった彼女が独断で調べ、白状させたとの事です」
「…中々気が強い妹だな」
「ヒロヤさんともよく喧嘩してたそうで」

苦笑混じりに言う斎。
獏也も釣られて微笑を浮かべた。
が、穏やかな空気はここで一変する。

「獏也さぁぁあああんッ!!!!!」

アースセイバーの知恵袋、シノがただ事ではない様子で応接室に転がり込んできた。

「どうしたシノ。何をそんなに慌てている」
「じっ実は今………」


「守人の頭さんが…ここに来てるっす……」
「…………」
「か…佳乃…が……今…こ…こ…に…!?」

驚きを隠せない二人。
特に斎は恐怖もあるのか、開いた口が塞がらない。
…本当に『兄妹』なのか。
『姉弟』の間違いではないのか。

「で、いいい今、ど…どど、どこに……」
「ここですよ」

とドアの向こうから、僅かな怒気を含ませた声と共に、守人の総元締め・弓流山 佳乃が姿を現した。
それを見た斎は思わず跳ね上がる。

「か…佳乃……ど、どうしてここに…」
「ええ、用件があったので水鏡で連絡取ろうとしたのですが、何故か出てこないので直接実家にお伺いしたのです」

~数十分前・水無瀬家にて~

「あっ姫君! お帰りなさいませ!!」
「久しぶりですね、猫子」
「はい! あっ、すぐに旦那様と奥様を…」
「いえ、今日は兄君に用があるのです」
「えっ、い…斎、様で…すか? で、ですがそれなら水鏡で…」
「出ませんでした。だから直接お伺いに…兄君は?」
「あ、えと……い、いろは館に行きましたよ! 前に修繕を頼んだ着物を取りに行くとかで…」
「ほう…実はここに来る前にそちらに行きましたが、兄君はいませんでしたよ?」
「え………」
「もう一度聞きますが…どこに行った?」
(ヤバい!! 敬語抜けてる!!!)
「どうした? 答えられない事では無い筈だが?」
(ヒィィイイイ!!!)


「…で、白状させた所…ここに行ったと」
「…猫子………」
「……守人の女性は皆気が強いんだな」

そう呟いた獏也を一瞬だけ睨み付け、再び斎に視線を戻す。

「それで…何故こんな所にいる? 信用する価値の無いこんな組織に」
「あ、いや、えと、その」
「答 え ろ」
「わわわわわ分かったから! 分かったからーーー!!」
「よし」

佳乃の威圧感にとうとう根負けした斎。
獏也はそれをいたたまれない様な気持ちで見ていた。

「……ウスワイヤの方に、『ある物』と行方不明になっているメンバーの捜索を依頼しようと…」
「何?」
「だって、うちには攻撃系の能力者の割合が多いじゃないか! …独断な行動だったのは反省するけど」
「…まさか兄君も同じ考えだったとは」
「えっ?」
「…不本意ではありますが、ちょうど私もそれを、ウスワイヤに依頼しようと思っていたのですよ」
「え…ええっ!?」

意外な妹の言葉に驚愕する斎。
獏也も彼と同じ事を思ったらしい。

「で、でも…何故貴女がそんな…?」
「いくらウスワイヤが嫌いでも、分別はついてますし、現実もちゃんと見てます。…本当は頼むどころか来たくもないがな」

ポツリとタメ口早口かつ、明らかに不機嫌な声色でそう呟いたのを、斎は聞き逃さなかった。
気疲れなのもあってか、呆れ気味に掠れた笑い声を上げる一方で、獏也は、とりあえず以前の様な、剣呑な事態にはならない事に一安心する。

「ああ、後もう一つ」
「?」
アンジェラがいかせのごれに帰国するそうです」
「アンジェラが!?」
「噂をすれば影が刺す…とはまさにこの事か」
「? 何の事だ?」


「……………この部屋を焼き尽くしたい所だが、まあ、本人が認めてしまったのなら仕方ない」
(いや認めてなくても駄目だから!!!)

相変わらず物騒な妹の発言に、斎は冷や汗をダラダラ流すが、当人は知ってか知らずか話を続ける。

「えー…まあ、後日面会をお願い出来ませんか? アンジェラを連れて行きいので」
「了承した。それでいかせのごれに帰国する日は?」
「たった今通達が来たから、早くても3日ぐらいだろう。また追って連絡する」
「分かった。…後一つ聞いても良いか?」
「?」
「何でしょうか?」
「ヒロヤについてだが…何故彼はあそこまで他人の言葉を鵜呑みにする?」
「と言いますと?」
「…時々、戦闘任務に行かせているのだが、その時チームメンバーからよく『自分達の言う事ばかり聞き入れる』『すぐ主張や意見を変える』と聞かれているのだが…何か心当たりは?」
「ふむ………確か、アンジェラがいかせのごれを離れる前、『ヒロヤの「自分の言動は全部間違ってる」っていう考えが気に食わなくて大喧嘩した』と言っていたな…」
「自分の言動は全て間違い…か…なるほど」
「…まあ、詳しい話はまた面会で、という事で」
「ああ、分かった。こちらも後で伝えておく」


一歩前進、帰還の知らせ


「ところで、二人の両親は今も健在か?」
「え、ヒロヤさんから何も聞いてませんか?」
「いや、何も」
「……………忘れるとか、バカか…」

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最終更新:2012年11月18日 11:36