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タマモと「りん」と

「今日もいい天気じゃの、おりん」

秋山寺院。
縁側でタマモと「りん」が日向ぼっこをしていた。

「今日はどこか散歩にいこうか?」
「……」
「おや、寺にいたいのか?」
「……」
「うむ、分かった。ではこの後何をs」
「こらぁああああ!!!!!」

と、突然どこかから怒声が響いた。
そして次の瞬間、縁側の向こうから鼬らしき生き物が、「りん」に向かって飛び込んだ。

「!? 大丈夫か、おりん!」
「きー」
「そうか、良かった…ってちがーう! お前には聞いておらぬ!!」
「き?」

「りん」の腕の中で首を傾げる鼬。
そして次に飛び込んで来たのは――。

「くぉら紫緒嶺(しおね)ー!!!」
「ききっ!?」
「盗み食いするなっていつも言ってんでしょーがぁあああああ!!!!!!」
「ちょっ…ヨシエ!」

タマモは焦った。
この素早い鼬――紫緒嶺は、同じ百物語組の彼女に捕まる事無く逃げ出すだろう。
そうなれば間違いなく「りん」にぶつかってしまう。
そこでタマモは咄嗟に――。

「危ない!」
「ふぼっ!?」

尻尾でヨシエを弾き飛ばす…までは良かったが。

バシャーン!

「あ」

勢いが余り、池に落ちてしまった。


「はーくしょんっ! うー…」
「すまぬヨシエ…もっと加減していれば…」
「いや、タマモさんは悪くないよ。りんちゃんを見てなかった私が悪いのよ」
「しかし…」
「ほらほら気にしない! そもそもの原因はあの鼬なんだし! 見習い陰陽師さんに、どうにかしてもらおうかしら」

噂をすれば影が差す。
その見習い陰陽師、廻が姿を見せた。

「あ、二人共…に、りんか。よしよし」
「廻ちゃん! ちょうど良い所に」
「…まさか紫緒嶺? 急にいのうなっちょば(いなくなった)と思えば…」
「そうなのよー。何とか出来ない?」
「そうかて、わてもあやつの奔放振りには、ほとほと困ってんばにゃ…いつもごますなあ(ごめんなさい)」

しゅんとなる廻。

「…ま、今に始まった事じゃないしのう」
「がばんに(頑張って)、一人前の陰陽師にべさなるけね」
「うむ。お主ならきっと…いや、必ずなれるぞ」
「ありんとね(ありがとう)、タマモ!」

タマモが「りん」と縁側に戻ってくると、黒い髪と人間離れした白い肌が目に入った。

「何じゃ。お主か」
「……誰かと思えば。…花魁狐」

振り向いたその妖艶な顔は、赤い隈取と紫の紅で飾られている。
門下生の杠に憑いている大妖怪、虚空だ。

「妾は花魁狐ではない。タマモじゃ」
「…………」
「お主も、ちゃんとした名前があるじゃろう?」
「…名前……」
「そうじゃ、お主を受け入れた陰陽師につけられた……と、そういや杠は…?」

普段、この大妖怪は杠の精神にいる。
それがここにいるという事は、今彼女は彼の精神にいるという事。
「その気になればいつでも杠を殺せる」と、脅した事を聞いたタマモは少し怪しんだが、それは杞憂に過ぎなかった。

「休んでいる。暇だったから、その隙に表に出た」
「そうか。…何故そこまでして、強くありたいと思うのかの…あの娘は」
「知らん、俺には関係ない」
「……ならば」
「?」
「何故彼女に憑こうとした?」
「……退屈しのぎだ」
「本当に?」
「………」
「…ま、これ以上聞いたところで、お主は何も言わぬか」

と、傍らでうつらうつらとしている「りん」の頭を優しく撫でる。
それを虚空はじっと見つめた。

「…何じゃ? 何か珍しいのか?」
「……いや」
「…もしや、お主も撫でて欲しいのか?」
「斬るぞ」
「おお、怖い怖い。とりあえず、それは杠にやってもらえ」

仏頂面の大妖怪に、悪戯っぽく笑うタマモであった。


「………幽花。どいてくれぬか」
「………」

虚空がどこかへ行った後、しばらく縁側でうたた寝をしていた最中、尻尾にどすん、と、何かがもたれた為に目が覚め、振り返って見てみると、風変わりな謎の門下生、幽花が尻尾を枕代わりにしていた。

「幽花や~…」
「………」
「…困ったもんじゃのう…」

この気まぐれな娘は、いくら言っても聞かなかった。
気持ち良いのは分かるが、これでは動こうと思っても動けない。
と。

「? おりん?」

「りん」が幽花の元に寄ってきた。
幽花と目が合うと、彼女はいつもの笑みを見せる。
すると幽花は、近寄ってきた「りん」の頭をぽんぽんと撫でた。
そしていつもの白いワンピースのポケットを探り、「りん」に何かを差し出す。
桃の飴だ。

「?」
「……やる。食べていい」
「♪」

飴を受けとると、「りん」はまた、いつもの笑みを浮かべた。
それを見たタマモは少し驚いたが、それはすぐに笑顔へと変わった。
そして思わず聞いた。

「幽花」
「?」
「お主は本当は優しいのに、何故周りに…遊利に冷たくする? まるで嫌われたいみたいではないか」
「………………」

無言、とその時。

「あ、幽花! ここにいtいてっ!?」
「…………」
「……幽花、飴玉は投げるものではない」

いきなり遊利に飴玉を投げつけた幽花の行動に、ただ呆れるしかないタマモであった。


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最終更新:2013年03月03日 20:46