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姉と弟

――――――――

『っ……、…』

「……ねぇ、羊、さん?」

『!』

「……どうしたの?」

『ふー…、ふー……!』

「けが、したの?」

『寄るなッ…!』

「うっ…」

『は……』

「でも、くるしそうだよ!」

『っ、やめ…』

「ねぇ、――、ばんそうこう、もってる?」
「もってるー!」

『っ、この…』

「うわぁッ?! び、びりびりした…」

『だから、いっただろう』

「っ、」

『な――!?』

「いっ、う」
「おねえちゃん!」

『キミ、何して…!?』

「だって、ほっとけないんだもん!」

『……、』

「でき、たぁっ!ばんそうこうはれたよ!もういたくない?」

『……キミは…』

「えへへ、いたくなったら、ばんそうこう、だよ!」

『…バンソウコウ』

「そ!ばんそうこう!」
「も、へいき?」

『――あぁ、もう、へいきだ』

「「やったー!」」

――――――――


「ゆーちゃん、入るよ」
「だめ。…いやだめっつったろ、なんで入ってきてんだ」

 スイネからアドバイスをもらったその日の夜、榛名有依は弟である榛名譲の部屋へと押し入った。
「だめだ」と言ったにも関わらず、扉を乱暴に開けた姉に「返事聞く気が無いなら聞くなよ」とか
「もっと静かに開けろよ」だとか、いろいろと文句を言いたかったが、面倒くさいのでやめた。
―――まぁ、乱暴に扉を開けた割には、姉の表情が暗い、というのも、理由だったのだが。

「あの、さ。ちょっと話したいことあるんだけど、笑わないで聞いてくれる?」
「どうしたんだよ、姉貴らしくねーな」
「その、ね――アタシ、変なんだ」

変?とユズリは首を傾げる。元々変なのに、何を今更。
なんてことは、言えなかったが。
椅子でくるくると回りながら、姉の話を聞いてみることにする。

「ここ最近ずっと、自分が変なんだ。いる人、物、全部数字に見えたり、シャーペンが出せたり、飛ばせたり
なんでかって深く考えようとすると、頭がガンガン痛むんだ」
「………」
「こんなこと、友達に話したら笑われるだろうしさ、ゆーちゃんに―――?」

ユウイは、途中で話すのを止めた。
いや、止めざるを得なかった。

すとん、と自分の後ろの壁に何かが突き刺さったのである。
ふ、と見てみると、鋏だった。

「―――!?」
「姉貴の「変」ってのは、コレのことか?」

気付けばユズリは椅子から立ち上がっており、彼を囲むようにして数本の鋏がふよふよと浮いている。
瞳が灰色に鈍く輝くその姿は、まるで自分のようで。

「もしかして、あんた、も―――?」
「……まさか、姉貴も、なんてねぇ…」

はは、と力無く笑い鋏を消してどすんと床に座るユズリ。
まさか姉まで「殺されて」能力を手に入れているとは思っていなかったのだろう。
自分と同じように「姉も殺されていた」という事実を受け入れたくなかったのかもしれない。

「「死んで」手に入る能力らしいぜ、これ」
「死ん、で……」
「俺は友達の女に殺された。階段から突き落とされて、鋏で、こう…な?」

 左手でVサインを作り、それを腕に宛ててみる。死因を話すのは辛くは無いようだった。
ユウイは、と言えば。まさに何も言えない、の状態。まさか、自分の弟が自分と同じ能力を持っているだなんて。

「そっ、か…前にゆーちゃんが病院に運ばれたのって」
「そ、コレが原因」


「ぶっちゃけ、特殊能力とかには憧れてたけど、ちょっと、精神的にきちぃな。「殺された」っつーのは――」
「て、ことはさ」
「?」
「ゆーちゃんも、友達、殺しちゃってるんだよね…」
「…そう、だな」


「………」

「………」




「…辛くないの?」

「………」



「………」

「…辛ェに決まってんだろ、アホ姉貴…」


(持っていないものを手にしたからといって)

(必ずしも、幸せになれるわけではない)

(……そのことを、私たちは忘れてはいけない)


姉と弟

――――――――――

「くっ…、ここ、は…」

『あぁ、目が覚めたのね!よかった…』

「お前は……?」

『大丈夫。私は何もしないわ。ただ、貴方を助けたいだけ』

「お前、頭が残念なのか…?!今は戦――ッつぅ!」

『ほら、傷に響くでしょう!お願いだから、大人しく…』

「何故、私を助ける…?ただの人間、の、くせに」

『そんなの関係ないわ。困っている人がいたら助ける、当たり前のことよ』

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最終更新:2013年03月21日 20:19