――その日、いかせのごれの夜は騒がしかった。
街中で上がる悲鳴。曰く、幽霊を見たと言う人間が、街のあちこちで現れたのだ。
その目撃箇所に法則性は無く、墓地や廃墟で見たと言ういかにもなものから、ゲームセンターやデパート内などまさかと思われるものまで様々であった。
この事態を、アースセイバーは超常現象に認定。事件の収拾に出た。
――・――・――
ウスワイヤ。そこはさながら、野戦病院を思わせる有り様だった。
事態収拾に戦闘要員から隠蔽工作要員まで様々な能力者が駆り出され、そして事態収拾まで彼らは戦い続けた。
事件そのものは、いかせのごれ各地にホウオウグループが生み出した兵器、人造亡霊レギオンが出現した事によるものだった。人造とは言え、一応は亡霊、陰魄である。しかも、レギオンは時間が経つにつれて増殖すると言う性質を有し、このまま放置した結果どんな事態へ発展するか分かったものではない。
幸い、レギオンには物理干渉する事が可能であり、その密度を削り減らす事によって消滅させる事が可能だ。なので、戦闘要員の手でレギオンを除去し、関係者を工作要員が記憶改竄する事で事態を納める、と言う手筈だった。
だが、事態は思わぬ方向へと進んだ。
出現したレギオンは、今まで出現したレギオンとは異なっていた。霊体の身体に神経ガスや腐食ガスなどを包んだ変異種や、複数の亡霊が合体して巨大な霊体化する物など、今までとは違う性質を持っていたのだ。
これら変異型レギオンの出現により、アースセイバーは苦戦を強いられた。特に近接戦闘を主体とする能力者はその多くが神経ガスによって身体の自由を奪われ、早い段階で戦闘不能に陥った。また所によっては、レギオンの体内にあったガスが周囲に蔓延し、一般人にまで被害が及ぶ事態も発生した。
その光景はまさに戦場、或いは地獄。
事件発生から鎮圧まで、実に八時間。アースセイバー史上でも珍しい大事件となった。
だがそれ故に、誰も気付かなかった。
これを隠れ蓑にして、街から姿を消した者達がいたと言う事に。
――・――・――
「セラは無事に、カチナシを連れて逃げたみたいだな……どうする。協力費と称して、何か手伝わせるか?」
「別にいい。俺達の作戦が、たまたま奴を助けただけだからな。それに、一応はかつての同窓だ。」
「どうだか。一般人巻き込んでこんな騒ぎ起こすとか、お前まるで
ジングウみたいだぜ」
「はったりは派手な方がいい。アースセイバーの奴らには、これが
ホウオウグループのやり口だと錯覚するだろうさ。奴らの目がグループに向いている間は、俺達は自由に動ける」
「……長かったな」
「ああ、長かった。だが、それも今日までだ」
「奴らに、思い知らせる時が来た」
「俺達を見限った奴らを、見返す時が来た」
「俺達を虐げて来た奴らを、滅ぼす時が来た」
「俺達は覚えている」
「俺達は忘れない」
「鳳凰の眷属共、」
「絶対者の狂信者共」
「俺達はここに居た」
「俺達は生きている」
「俺達は負けていない」
「俺達は死んでいない」
「「滅びるのはお前達だ」」
≪地の底で這う者達≫
(その有り様はまるで鼠)
(猛禽類に啄まれるだけでしかない、矮小だった彼らは、)
(薄暗い穴の底で、ひたすら爪を研ぎ、牙を磨き続けていた)
(彼らは牙を剥いた)
(自分達を墜とした存在を、)
(自分達を見下す存在を、)
(その座から引きずり落とす為に)
最終更新:2013年05月12日 21:29