―第五話、秘密の話―
「ねぇ、静葉ちゃんに亮くんだっけ?二人とも、『
色のない森』って聞いたことあるかい?」
「『色のない森』…だと?」
「そ。その名の通り森には色がなくてね。鳥の鳴き声も、風の通り抜ける音も聞こえないらしい。」
「…それが、なんだ?」
「それをね、今から見に行こうと思っているんだけれど…。良かったら、君たちも一緒にどう?」
名も名乗らないうちにそんなことを切り出した男はどこかワクワクしているように見える。
静葉としてはこの気味の悪い男の名前より、この男がさっき発した言葉がずっと気になっていた。
―ねぇ、二人ともさっきいきなり幽霊みたいに現れたように見えたけど…。
それは、チョーノーリョクとかそういう類…?ねぇねえ!―
超能力、まぁそんなものだろうと静葉自身も認識している。
だが、それをなんでこんな男が聞くのか?
普通の人間ならそれこそ幽霊でも見たように逃げ去るだろう。
だがこの男(と女性)はそんなことは無かった。
それに、見知らぬ人間に『超能力』などと聞くのは少々おかしい奴位だろう。
なんにせよ、静葉の答えは決まっていた。
「断る。俺は名前も名乗らん怪しい奴についていくほど愚かじゃない。」
「つれないなぁ~静葉は。
あぁごめんね~静葉はこういう固い性格なんだ。」
睨みを効かせて警戒する静葉の横で亮が緊張感無く言う。
「あ、ごめんね~遅れたけどおれは
フミヤ!こっちの子は袖子ね。」
「こんにちは、静葉ちゃんと亮君。」
思い出したとでも言わんばかりに男…フミヤは言う。
静葉の警戒など全く気にしていない様子だ。
「ねぇねぇ~いいんじゃない?
もしかしたら『あれ』に関する情報が得られるかもよ?」
亮は静葉にこっそり耳打ちする。
それを聞くと静葉はやや渋い表情になり、ため息をついた。
「お前は騒ぎに首を突っ込みたいだけだろうが。
だが、こいつらについていけばもしかすると…」
静葉は成見をちらりと視る。
さほど警戒はしていないように見える。
「…いいだろう。
俺たちも少し探し物があるからな。
探索がてらに協力してやる。
成見、それでいいか?」
「俺は構わないよ…変なものが『見える』し少し不安なんだ。」
「やっぱそう来なきゃね!」
はしゃぐ亮を後目に今度はフミヤを見る。
「その『色のない森』とやらに案内してくれ。」
「うん、わかった!」
<To be continued>
最終更新:2013年06月07日 09:28