【電脳ヴィジョン】
―第6話、人工物の話―
「ご主人!ご主人!起きてください!朝ですよ!」
「んぁ…もうそんな時間か。起こしてくれてありがとうな、アイ。」
朝日はとっくに昇り外は明るくなっていたが、締め切ったカーテンに包まれた俺の部屋には関係のない話だ。
少し眠い目を擦り正面を見ると、濃藍色のツインテールの髪に青い目という人間として珍しいというかありえない色の少女が
青色のパジャマ姿で両手をわたわたと振っている。
ちなみにコイツ、色だけが突っ込みどころではない。
なぜなら宙に少し浮いてるし、身体が少し青色に発光しているからだ。
まぁ、慣れたら驚きもしないけどな。
そんな奇抜な少女に起こされた俺の名前は
霧島 優人。
いかせのごれ高校に通う学生だ。
奨学金や将来の融資やらで働きもしないで結構裕福な一人暮らしを満喫している。
特別なことをしたつもりはない。
ただ、なんか高校入試で500点満点取ったらいきなり大学やら企業やらから将来の話をされて、
春にあった統一模試で偏差値78.4とか取ったら、こんな生活になっただけだ。
それ以来学校じゃクラスメイトに「おまえなんでこんな落ちこぼれ高校に来たの?」って言われるし、
担任以外の教師はよそよそしい態度するしで居心地悪い。
ただ少々いい点数取っただけだろ?
いかせのごれ高校に来たのは家から近かったからだっつーの。
まぁ、あいつらから離れて一人暮らしができるようになったのだけは良かったけどね。
それより、俺はアイがうちに来たことの方が良かったと思う。
アイとはさっきの奇抜な奴のことで、どういう原理か知らないが俺のパソコンの中から『出てきた』
なんか人工知能が身体をつけられたみたいな感じで、服をネットからダウンロードしたりパソコンの中に入ってネットサーフィンしたりと
よくわからんことをしてるけど、いちいち気にしたら負けだと思ってる。
過去のことはわからんけど俺を『ご主人』って決めたらしく、いろんな手助けをしてくれるし話してて面白い奴だし、そこらの人間より
遥かに好感の持てる奴だな。
一通りのことを終え、アイがトースターに入れててくれたパンを喰いながらニュースを見る。
相変わらずどうでもいいことしかいわねぇなこいつらは。
「ご主人、なんか言ってることがゴミクズですねこの人たち。」
「言ってやるな、こいつらも仕事で言ってるんだからな。」
ふよふよ浮きながらテレビを見ていたアイがそんなことを言い、俺が答える。
ちなみにコイツ、物は食べられるが特に食事をする必要は無いらしい。
睡眠も必要は無いらしいし、何て言うか便利な身体だ。
俺だったら…毎晩徹夜でネトゲしたり映画三昧にするな、うん。
「それはそれとご主人、今日は放課後あそこに行くんですか?」
「ん?ああ、行くよ。アイも来るんだろ?」
「それはそうですが…ご主人、今日は『特別教育相談』でしたよね?放課メッチャ早いんじゃないですか?
団の皆さんの都合と合うのですかねぇ。」
「あ…そうだっけ?面倒だなぁ。」
アイに言われて思い出し、顔をしかめる。
『特別教育相談』
なんて言えば聞こえはいいが、要するに大学やら企業やらのプレゼンテーションを聞くだけだ。
俺を早いとこ引っこ抜きたいらしく、学校もいくら貰ったかは知らんがやたら積極的だし。
その日はそれだけで午前中のうちに俺だけ放課(元々授業受けなくてもいいって言われてるが)っていいこともあるが。
「まぁ、集会所に居ればそのうち集まるだろ。アイはどうする?」
「ん~私はご主人のクラスに遊びに行こうかと。少しの間
ケイイチ君たちと話してませんし。」
「また『日高 愛』に化けて行くのかい?まぁ、面倒な連中にばれないようにね。」
「はいっ♪」
そう言うとアイは一瞬で制服姿で黒髪黒目に変化した。
着替え変装も一瞬とか、ホントに便利だなコイツ。
「んじゃ、そろそろ行くか。」
皿を片付けて、俺とアイは家を出た。
―――――――――――――――――
ま、人目というのは慣れないもんだな。
学校に近づいて、生徒が多くなった途端にあっちこっちでヒソヒソ話だ。
でも諦めは肝心、もう気にしないようにはしてるがな。
そんなことを思ってると、いきなり目の前に長身の少女が現れた。
「優人、アイ。」
こくんと頷くこいつはアリス。
まぁ『友達』ってところだが、事情は結構複雑だったりする。
「静葉が今日は少し早めに来てほしいって言ってた。僕も放課後すぐに行く。」
「あ?丁度良かったな。俺は今日は早く終わるからな。」
「良かった。じゃあ、僕はこれで。」
なんて言ってアリスの奴はそそくさと校門をくぐって行ってしまった。
「あー何か、団長がせかしてるってことはやな予感がするなぁ。
ま、考えても仕方ない。さっさと行くか。」
「あ、じゃご主人。私は2-1に行ってきます。」
「おう、正体ばれないようにな。」
アリスに続いていそいそと校舎の中に入って行ったアイを見送りながら、俺も面談場所の化学講義室に足を進めた。
この日を境に、俺はこの街の暗部を知ることになるとも知らずに。
<To be continued>
最終更新:2013年06月25日 00:16