タカコは基地の廊下で
アオギリと
コオリの二人に出会った。
「あら、二人とも何してるの?」
「あ、タカコだ。」
「いまね、おねがいごと書いてもらってるの。」
「たくさんかざるのよ。」
「いろんなひとに書いてもらってるの。」
「タカコも書いて。」
「うーん、なるほどねぇ…。」
黄色い紙に、赤のペン。少し迷って、壁に押し付けてさらさらと書いた。
『皆がまともな料理を作って食べてくれますように タカコ』
「二人にも料理教えといたほうがいいのかしらね…」
ぽつりと呟く。教育としては悪くないかもしれない。そんなことを考えながら二人に渡す。
「ハイこれ。きれいに飾ってね?」
「もちろんなの。」
「タカコ、ありがとう。」
そう言うと二人は廊下を歩いて行った。
資料を置きに部屋に入った瞬間、ふと二人が向かった先にあるものを思い出す。
「あ…ゲート…まさか、また外に行ったんじゃ…」
数秒迷って、見なかったことにした。
モトとシュウトが話しているときに、白い子二人組と出くわした。
「ん…?あんなこまい(小さい)子が二人だけで出歩くとは危なかね。いくらこの辺が交通量少ないつーても」
「まぁ、モトさんみたいな危なそうな人にさえ近づかなきゃ大丈夫でしょ」
「茶化すなや。いてもうたろかい。つーかヤンキーとかヤクザは基本ちびっ子には優しいんやぞ」
そんな会話をしていたら。
「バイクのおじさん、メガネのおにいさん、おねがいごと書いて―。」
二人がいつの間にか目の前にいた。
「お、おじ…」
「プッ…ん?お願い事?」
「そうなの」
「たなばたなの」
「おねがいごとあつめるの」
「いっぱいかざるのよ」
「ああ、七夕かー。すっかり忘れてたな。」
若干ダメージを受けているモトを尻目に薄緑の紙と黒のペンを受け取ると、バイクのシートで書くシュウト。
『平穏無事に日常が過ごせるようになりますように シュウト』
白い紙を選ぶと、モトは赤のペンで大きな字を書いた。
『交通安全』
「モトさん、お札じゃないんですから…。」
「よかろーもん、こりゃ俺の願いじゃけぇ。ホレお二人さん、これ持ってき。」
「「ありがあとうなの。」」
二人はそういうと、再び歩いて行った。
コンビニの前でショウゴ、リュウザ、コトハがアイスを食べていた。
アオギリはショウゴにトテトテと近寄っていく。
「おひさしぶりなの」
「んぁ…?あ、いつぞやの。」
「ショウゴさんの知り合い?」
「ああ、学校に来た事があんだよ。アオギリちゃんだったっけ?」
「うん。」
「今日は友達と散歩?」
「ううん、おねがいごとあつめてるの」
「たなばたなの」
「ほう、そういやそんな時期か。どれ、貸してみ?」
赤い紙をショウゴが、ピンク色の紙をコトハが、青色の紙をリュウザが取ると、白いペンで色が着いている面にさらさらと書いていく。
『家内安全無病息災 ショウゴ』
「…ショウゴさんそれ、組内の事ですか?」
「そんな所だ。」
「これ、どういういみなの?」
「簡単に言うと、みんなが元気でいられますように、って事さ。お二人さんにはまだ難しかったかな?」
『スイーツが降ってきますように コトハ』
「コトハ、お前…」
「あら、いいと思わないショウゴさん?」
「意味が絶対危ないよね。額面通りの意味じゃないでしょこれ。」
「黙りなさいリュウザ。二人とも甘いものは好き?」
「「うん、すき。」」
「今日は暑いからお姉さんがアイスをあげるわ。感謝しなさい。」
『見つかりますように リュウザ』
「…主語抜けてんぞ、リュウザ」
「ちょっと多いんであえて書くのをやめました」
「欲張りねぇ、全く。」
コトハに買って貰ったアイスを舐めながら、白い二人は礼を言って歩いて行った。
「おっ、アオギリちゃん…だったっけ、こんなとこで何を?」
自販機の前でジュースを飲んでいたキイチが、歩いてきたアオギリに声をかけた。
「あ、キイチ」
「またおしりあいさんなの?」
「うん。ねぇ、たなばたなの。おねがい書いて?」
「お願い?あ―…OK、ちょっと待ってな」
『何か特別なことがありますように キイチ』
願いの形は人それぞれ。
込められた意味も数もまたそれぞれなのである。
最終更新:2013年07月06日 19:22