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復活への道筋

始末人との会話」の後の話です。
十字メシアさんより「シザキ」をお借りしました。


「………多っ」

夕方、アーサーとシザキがリュックと紙袋に目一杯の資料を詰めて病院へやってきた際の、長久の第一声だった。


『はい。言われたの探して持ってきたよ』
「サンキュ、アーサー。シザキ」
「…長久の言っていた「保護者」とは、君たちのことだったのか…。…すまなかったな。アーサーが世話になった上に、手伝わせる形になってしまって…」
「気にすることはないよ。困った時はお互い様だ」
「……恩に着る」

軽く頭を下げると、二人からリュックと紙袋を受け取る。
中を覗くと、分厚い茶色の紙封筒がぎっしり詰まっていた。

「…これ全部、UHラボの資料か?」
「関連資料もあるがな」

ハヅルから資料の一部を受け取ると、長久はそれにざっと目を通す。
そこにはラボの詳細や規模、研究員や被検体の情報、実験の内容などが事細かに書かれていた。

「……文字で見てるだけで胸糞悪くなりそう…」
「同感だ」

大量にある資料の一部、しかも数枚にしか目を通していないのに、頭部に鈍痛が走った気がして長久は軽くこめかみを押さえた。
答えるハヅルも、あまり表情は明るくない。

「でも、UHラボがどんな研究所か、ってのはおおよそ理解した。危ないところみたいだな」
「…ああ。そうだな…」
「しかし、見たくないは通用しないからなぁ…俺はどの辺を調べればいい?」
「そうだな……久我。お前は、これを頼む」

そう言われ、ハヅルから茶封筒のひとつから取り出された紙束を手渡される。

「これ…何だ?……UHラボ研究員?」
「あの客人の顔と名を覚えているのは…久我、お前だけだ。もしそいつがUHラボの関係者なのであれば、その資料に載っている可能性が高い…。探してみて、くれないか」
「了解。……とはいえ、こん中からアイツを探すのか…骨が折れそうだ」

ざっと見積もって厚み2.5センチはありそうなほどの紙の束を見て、思わずため息が零れる。
が、それも僅かな時間のことで、すぐに姿勢を正すと眼鏡を直して資料に目を通し始めた。

「正直、この大部屋に俺たち以外の患者がいなくてよかったよ。こんなの見られたら相当怪しい光景だぜ」
「………そうだな」

軽口のように呟かれた長久の言葉に、ハヅルは苦笑した。





ハヅルと長久が資料と格闘している間、アーサーとシザキの二人は病室の外にいた。
無関係ではないとはいえ、あまり他人に資料の内容を見られるわけにはいかない。そういう理由だった。

『ごめんね、シザキ。でも、これが僕たちの方針なんだ』
「いや、大丈夫さ。分かっているよ」
『そりゃよかった』

シザキの言葉に、アーサーは安堵したように笑った。


「………………あった!!」

しばらくすると、病室から長久の声が聞こえた。

「アーサー!シザキ!」

次いで二人を呼ぶ声が聞こえ、二人は病室の中へと戻った。

「どうしたんだい、長久さん」
『見つかったのかい?』
「ああ。こいつだ」

そう言うと、長久は紙束を留めているクリップを外し、その中から一枚の顔写真つきの書類を見せる。

「こいつが、蒼介を拉致った男だ」
「この人が…」
『………』

シザキとアーサーは受け取った書類を食い入るように見つめていたが、やがてアーサーが青い顔で顔を逸らした。

『やだよ……何でこんなひどいことができるの?』
「知りたくもないな。…アーサー。君は、あまり見ないほうがいいよ」

シザキが書類を返すと、長久はそれを受け取って手元の資料とまとめ、クリップで留める。

「…UHラボは既に無くなってるけど、残党や手札はどれほど残っているか分からない。だから…もし、その男と対峙することがあっても、一人でどうにかしようとかすんなよ」
「…了解、分かったよ」
「ならいいんだ………ん?」
「ん?どうしたんだい、長久さん?」
「いや…ちょっと分からない単語があって」

そう言って、長久は書類の一点を指差した。
アーサーとシザキがそれを覗き込む。

「………『失われた工房』?」
『なんだろ、これ?』

同時に首を傾げるシザキとアーサーに、ハヅルは別の資料に目を通しながら説明する。

「今言った…UHラボの生き残りたちが集まって出来た組織だ。目的は…世界征服だとか、ラボを潰した奴らへの復讐だとか……まあ、いろいろ言われているがな…。…以前、亡霊騒ぎがあったのを知っているか?」
「んー、言われてみればそんなこともあったような」
『僕知ってる!ベニー姉さんがまとめてるの見たよ!みんな大騒ぎだったって!』
「そうか…。…まあ、その亡霊騒ぎを起こしたのが、『失われた工房』の奴ららしい…」
「ふうん……」

ハヅルの説明に小さく頷きながら、長久は資料を紙封筒に戻した。

「…ってことは、こいつがこの組織と繋がってるって可能性もあるわけか?」
「……ないとは…言い切れないな。…元は、同じ研究所の研究者だ……。…シザキも、気をつけてくれ…」
「ああ、分かったよ」

一通りの資料を確認し終わると、元通りに紙袋とリュックにつめる。

「じゃあこれ、戻しておいてくれ」
『了解です!』
「あー、あと今度事務所の掃除するから、覚えておいてくれな」
『了か……ん?長久、もう退院できるのかい?』
「ああ。今すぐじゃないけど、早けりゃ明日にでも。気絶してただけだし、目立った後遺症とかもないんでね」
「それはよかった。おめでとう」
「ああ、サンキューな」


復活への道筋


『元気になったら、京姉さんたちにも報告しないとね!』
「ああ…助けてくれたのあの人たちだっけ。…お礼、しないとな」

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最終更新:2013年08月23日 19:50