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能力者が集うレストラン~氏型環編~(仮)

また回線が切れた。
今日で何回目だろうか分からない。
立ち上がった拍子に配線に躓いて転び、そのせいでものがいくらか棚の後ろにおちていった。
バールとか、つっかえ棒とか使おうかとも思ったけど、どうせ手を滑らせて足の小指を打つのがオチだと思い、仕方なく棚を動かして手を伸ばした。

パソコンの電源が、今日に限って自動アップロードでなかなかおちない。
いつもは勝手にエラーおこしておちるくせに。
「もう嫌だ…。」
ぐしゃぐしゃと白髪頭を掻きむしりながら抱え込み、部屋の中央でうずくまった。

どうしてこうも、付いていないのだろう。
触れるもの、使うものが、まるで拒絶してるようだ。
何もかもがうまくいかない。もう何もしたくない。

学校に行かなくなって、もう何年経つのだろうか。
毎日のように誰か来るけど、絶対にだんまりを決め込んでいる。
当たり前。
絶対ろくなこと、ないんだから…。

「しーがたちゃーん、プリントもってきたよー!」
外から声。ああ、もうそんな時間か。
そう思いながら自室の扉を閉めようとしたその時。

何かが勢いよく後頭部にぶつかった。
あまりに重いものだからそのまま吹き飛ばされ、反対側の壁に激突した。
何があったのか分からないまま、とりあえずよろよろと重い「それ」をどけてみた。

…え、げ、玄関のドア…!?
「あーっ!ごめん!大丈夫!?」
ドアのない玄関からは、背の低い女子が手を振っている。
何が何やらわからない。
もしかして…「あの子が壊した」…!?
ま、まさか、そんなこと…。

「あー、思ったよりバッキリいっちゃったなー。ちょっと調子に乗り過ぎたなぁ…。」
気がついたら、玄関先の女子は遠慮なく上がり込んで、すぐ隣に来ていた。
反射的に飛び上がるように離れ、壊れたドアをふる。
ところが慣れたように避けられ、反動でドアが顔面を襲った。
痛む鼻を押さえ、その場にうずくまる。この赤いの…間違いなく血だね…。




「何してんの?大丈夫?」
心配そうに寄ってきてきてるけど、絶対ろくな奴じゃない!
ドアが飛んだことに驚きもしない人が普通なわけない!
「だ、大丈夫なわけ…。」
ティッシュを探るけど、こういうときに限って箱の中が空だ。
あたふたしていると、女子はポケットティッシュを差し出した。

「え…?」
「顔、すごいことになってるよ。あげるからふいておいでよ。」
思わずぽかんと見上げる。
こんなことしてくれた人、初めてで…。
「ほらほら、早く!」
言われた通りティッシュを受け取り、洗面所に走った。
…まぁ、案の定洗濯物入れに引っかかって盛大に転んだけど。

「ずーっと、ここにこもってるの?」
プリント渡して帰るものだと思ってたのに、この女子はしつこく部屋にいる。
「そうよ。」
「暇じゃない?」
「もう慣れた。」
「暇って慣れるものなの?」
「…。」
正直、うんざり来ている。
「ねぇ、いい加減帰ってくれない?」
「やだ。面白そうだもん。」
こちらの不愉快なんてそっちのけ。子供かあんたは。

「ねぇ、外でない?」
「は?」
「外!暇なんでしょ?ちょっと気分転換にさ!」
暇だとか一言も言ってな…。
「いこいこ!」
有無を言わさず、腕を引っぱられ外に出た。

「ゆーいちゃーん!かなーでちゃーん!」
やって来たのは小さなカフェレストランか。
この女子の知り合いらしい人は、カウンター越しに振り向いた。
「おー、いらっしゃい!今日も一人?」
「ううん、今日はお友達も連れてきたの!」
「珍しいな、友達連れてくるなんて。」
「…そんなつもりなかったんだけど…。」
なんて呟きは、無視された。




目の前にある真っ赤に染まったオムライスが、あっという間になくなっていく。
それを茫然と眺めていたが、流石に気になって声をかけた
「あ、あの…。」
「ん?」
「貴方…一体…?」
「あ、あたし?トキコっていうの!よろしく!」
「そうじゃなくて…。」

「なんで私を連れ出したの?」
「いいじゃん、どうでも。面白そうだったから。」
やばいパターンだ。
このまま付き合ってると危ない気がしてならない。

「私と付き合う人って、ろくな人いないのよ…?」
「ならいいじゃん。あたしもろくでなしってことで。」
「ねぇ、なんで私なの?」
「だから面白そうだったからって言ってんじゃん!」
分からない人だ…。

「ねぇ、なんで学校来ないの?」
「…それはきかないで。」
「えー?学校面白いのに。いろんな人いるんだよ?きっとお友達できるし!」

…今まで何度、そんな言葉を大人にかけられたことだろう。
そのたびに信じ、裏切られた。
手首に、腕に、首に、残っているこの跡は、裏切られた証。

だから決めた。
もう誰も信じない。
「モノに嫌われる」私が、「モノに好かれる」わけがない。

黙って立ち上がり、引き留めるのを振り切って、家路を走る。
途中で何度も躓いて、転んだけど。
「モノの優しさ」なんて、いらないんだ。必要ないんだ。ほしくないんだ。
…多分


「…あーあ。折角誘おうと思ったのに。」
スプーンを置いて、赤くなった口を拭きながら、トキコは言った。

「受け入れてくれる人、教えてあげようと思ったのになぁ…。」

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最終更新:2011年02月23日 22:35