天ノ川ノ叫ビ~失ト得~
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春・夏・秋・冬
陰・陽
裏・表
青龍・朱雀・白虎・玄武・麒麟
ありとあらゆる摂理は
常にその例外なく
私たちを取り巻く
その日この世に希望の光を見て生まれた命も
様々な摂理に縛られ、生きるはずだった
ただ
「盗まれること」さえなければ――
暗い暗い地下に、同じ音程の声は絶え間なく響き渡っていた。
白い光が真っすぐ降りる台座に寝かされたのは、何も纏わない赤子。
その横に、一人の少年が立った。
光を反射する銀の長髪に、赤い髪止めが映える。
二人を囲むように、たくさんの人が並んだ。
一歩前に出たのは、彼らの長。
少年の眼の前に立ち、布に包まれた「それ」を差し出した。
「…分かってるな。「これ」と、この赤子の左目を入れ替えるのだ。」
「…。」
少年は「それ」と、泣きじゃくる赤子を交互に見た。
人の情がまだ残っているその眼には、迷い以外に何もうつらなかった。
少年は「それ」を受け取ると、台を引き寄せ、メスを取り上げた。
物心付いた時は、山奥のおばあさんと二人暮らしだった。
よく木から木に飛び移り、はだしで山を駆け上って遊んだものだ。
しかし、彼女に「友達」はいなかった。
鳥は逃げ、熊は威嚇し、人は気味悪がって近づかなかった。
やがてウスワイヤに保護されたが、よく施設を抜け出して街に出た。
世界を知らない無知な少女は、きっと誰かが自分をみとめてくれると信じていた。
しかし、人の反応は変わらない。
同じくらいの子供は、罵倒し、殴り、石を投げた。
そしてボロボロになったところを見つけられ、連れ戻された。
その日も例外ではなかった。
街角の端に座り込み、見て見ぬふりをして歩く人を見、泣きだしそうなのを必死にこらえていた。
「…どうして…?」
鏡を見たことがなかった彼女は、どうして自分が忌み嫌われるか分からなかった。
「…どうしたがか?」
不意に、声をかけられ、顔を上げた。
紫色の髪の同い年くらいの少年だった。
少年も例外ではなく、彼女の顔を見てひどく驚いた。
その顔を見、少女は「ああ、またか」と目を閉じた。
しかし、次の瞬間彼が発した言葉は
「おいで。けがの手当て、してあげるぜよ。」
というものだった。
少女は驚き、安心したように笑い、同時に泣きだした。
少年の着物を引き寄せ、大声で泣いた。
少年は少女の明るい金髪を、ゆっくりなでた。
少女はしばらく、少年の家である寺で過ごし、少年の手を引いてウスワイヤに戻って来た。
そして、獏也を呼ぶと、彼女ははっきりと言ったのだ。
「私の今までの記憶、全部預かってくれ。」
鏡の前でもう一度、その隠れた左目をあらわにする。
思えば、この「左目」のせいで全てを奪われ、全てを与えられた。
記憶の前半だけですべてを把握した星は、記憶の「後半」を返してもらうつもりはなくなった。
「…わるいな、クランケ、月光。私、うそつきになっちまうな。」
星はふっとわらうと、もう一度左目を隠すために包帯をとった。
「白」に隠れゆく「赤」の奥底にうつる「黒のエンブレム」を、鏡ははっきりと映し出していた。
最終更新:2011年03月17日 14:50