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裏寒表温

裏寒表温

由衣が今起こっている全てを知ったのは、幹久朗との出会いから数日ほどたった後のことであった。
自分の知らない間にそんなにも大変なことが、しかもこのいかせのごれで相次いでいると知った由衣は、強く歯ぎしりした。
「あの店長…、そんなことまで隠してやがったのかよ…。」
「純粋にそういう事件に、君を巻き込みたくなかっただけだと思うんだけどね。」

「そうだとしても、これ以上友達が傷付けられてたまるかってんだ。」
どうして不良だったのか疑問になるほど、情が厚い由衣。
その性格が一喜一憂を生むことは、幹久朗も把握していた。

しかし、その諸悪の根源は何処にあるのだろう?

その根源が一つとは限らない。
単純な問題が根を絡ませ合い、複雑になっているだけかもしれない。
ホウオウのように「分かりやすい」事例ならともかく、個人単位で動いている奴もいるだろう。
その根源を全て叩きつぶすなど、困難極まりない。

成程情には厚いが感情的で頭はよろしくないらしい。
そんな由衣を見ていると、どうしても心配になってくる。
――ああ、自分もこの世界で生活してきて、「人間くさく」なったらしい。
だが、それも悪くないとつい最近思えるようになってきた。
それもこれも、主のおかげと思えば、悪くない。

「…例えそうだとしても、君は誰を相手にするつもりなんだ?」
「え?」
「悪いのはホウオウじゃないかもしれない。そりゃ確かに、ホウオウは悪いことしてるさ。でも、それが今回の事例と関係するとは、必ずしも言えない。」
「あ…。」
「一度頭を冷やそう。特訓がこれで完成したわけじゃないんだしさ。最初に比べれば能力の使い方、大分うまくなったけど。」

「…そうだな。ありがとう。」
「いいんだよ。これからもがんばろうな。」
幹久朗はそういって、由衣の肩を引き寄せた。

「…じゃあ、暗くなりそうだから今日はこのくらいで。」
砂埃を映し出すのが光から闇にかわりつつあった。
由衣は持ってきていたタオルをはたき、汗をぬぐった。
「毎日ごめんな。」
「いいのいいのwこっちも閑古鳥鳴いてて暇なわけだし。」

「そういや、店やってたんだってな?」
「まぁね。とはいっても東の端の方にあって、「これる客もこない」し。」
「?」
東の方になにかあったっけ?と由衣は疑問に思ったが、深くは考えなかった。

「じゃあ、また明日!」
元気に由衣は片手をあげ、家路へと走って行った。
残された幹久朗もしばらく手を振っていたが。その手を下ろし、逢魔ヶ刻の灰色の空を見上げた。

「…くだらない世界になっちまったもんだ。自分や、自分の崇拝している命の方が大事だと誰もが思いこんでいる。そして、くだらない開発のためにたくさんの「命」を消していく…。」
逢魔ヶ刻。それは、妖怪の力をより引き出させる時間の一つ。
人間味を持った妖怪も、この時間、妖怪の血が動き出す。
「「人間の命」が「自然の命」より重く貴重だと、誰が決めた――?」

金緑色の眼は、血のように赤く染まっていた。

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最終更新:2011年04月01日 15:44