「おっはよー!」
朝。
トキコはいつもと
同じように教室に入ってくると、人のいない席がいくつかあり、
隣のクラス同様、普段より人数が少なかった。
しかし彼女はその変化に対し特に気をかけず、いつものように自分の席へ座ると、
鞄を開いて整理をし始めたのであった。
片付けも終わり、しばらく外を見て黄昏れていると同じクラスメイトである利央兎が
教室に入ってきたので、トキコは声をかけた。
「リオ君おはよう!」
「あぁ、おはようトキコ。・・・昨日はどうしたんだ?それに、その怪我・・・」
声をかけてきた彼女よりも先に利央兎の目に入ったのは、
手首に巻かれた包帯と顔に貼られた絆創膏、そして所々に見える痣。
誰が見たって普通ではないと見て取れる状態にも関わらず、トキコは笑顔だ。
ああ、これ?と彼女は自身の傷を見てこう言った。
「実は、一昨日の帰り道に山に入ってたら転んじゃってさー。」
「・・・は?なんでお前山に・・・」
「山菜食べたかったの。」
「・・・」
「で山菜取ろうとしたら、崖から落ちちゃって、気が付けば一日経ってたんだよ?
びっくりものだよね!」
「・・・はぁ・・・」
嘘か本当かは分からないが、普段からハチャメチャなトキコであれば、
無茶の一つや二つもするだろう、とにかくいらない心配をしたようだと利央兎は悟った。
しかし、一日山の中に居たとしたら両親は心配しないのだろうか?・・・そもそも、
トキコの両親ってどんな人なんだ?
不意に聞いたことあるようでない疑問が彼の頭の中に浮かんできたので、
それを質問しようとしたが、先にトキコが口を開いた為、それは阻止されてしまった。
「ねぇ、」
「何?」
「鳥さん見なかった?」
「いや、見てないけど・・・お前の方こそスザクを見なかったのか?」
「見てないから聞いてるんじゃん。」
「けど、お前等仲が良いだろ?いつも一緒だろうし・・・!?」
不意に、利央兎を得体の知れない悪寒が襲う。
バッ、とその源に目を向ければ、笑っているトキコがいた。
・・・しかし、その笑みはいつものような人懐っこい子供の笑みではなく、
冷酷な笑み、それに近い、冷たい笑顔であった。
慄いている彼を余所にトキコが笑みを浮かべながら喋った。
「仲が良いからって、なんでも知ってるわけないじゃん?」
「・・・・・・・・・」
「まぁ鳥さんがいないなら仕方ないか!うっかり屋さんの鳥さんだから、
もしかしたら遅刻かもしれないし・・・あ、
ユウムちゃーん!」
トキコは同じ組織に属するクラスメイトの姿を見つけると、
利央兎の元から立ち去ってしまった。
残された彼は先程の悪寒の名残に微かに身体を震わせたが、一つの疑問が頭に
引っかかり、呟いた。
「・・・心配、じゃねーのかよ・・・?」
その問いに答える者は、誰もいなかった。
朱鷺と学友
(少しずつ、少しずつ)
(何かが違えていく)
最終更新:2011年04月01日 21:47