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西洋の伝説

西洋の伝説

「なぁ、星。お前、伝説とか伝承とかにh」
「すまん、全く興味はない。」
「だよなぁ;」
新聞を読む星を眺めながら、クランケは本のページをめくった。

クランケが事務所に転がり込み、どさくさにまぎれて何故かミサキまで同行して数週間。
いろいろあったが、なんとか落ちついてきている。
妖怪が苦手だったクランケも(認めたくないらしいが)慣れてきていた。

探偵、弁護士と法に基づいた現実問題を専門にしていた星。
怪盗としての技術と医学しか学んでこなかったクランケ。
その二人にとって妖怪という「オカルト・伝説」関係のつなぎは陰陽師の生まれである月光なわけだが、ろくにそういった修行を積んで来なかったせいで意外に月光も疎かった。

「…はぁ;これじゃろくに妖怪が分かる訳ないよなぁ;」
本に集中することを止め、大きく反りかえるクランケ。
そこに、つい今しがたまで出かけていた月光とミサキが戻って来た。

「ただいまー。」
「ああ、おかえり。春美ちゃん、どうだったよ?」
「変わらず元気だったわ。ちょっと疲れ気味でもあったけど、一つ大仕事やって来たらしいから大丈夫って。」
「そうか。ならよかった。」

「…で、クランケ殿。資料、このくらいあれば大丈夫がか?」
月光はやや大きめの手提げを机の上に置いた。
中には数冊の本。取り出し、ぱらぱらと中身を確かめ、クランケは頷いた。
「今の僕には十分だ。ありがとう。助かるよ。」

新聞を読んでいた星が顔を上げる。
「なぁ、クランケ。そんだけ妖怪関係の本読んで、どうするつもりだよ?」
「非現実的だろうと、これから僕には『嫌というほど』妖怪関係の話が上がるだろうからね。先に知識をつけておかないとと思って。」
「ふーん。でもそんだけの内容、全部覚えられるのかよ?」
「…僕の頭脳、なめてるわけじゃないだろ?」
「私との頭脳戦で何回負けたか覚えてねえだろ。」
「…まあね;全敗だったのは覚えてる;」

「西洋の伝説だったら、幾らか「キング」にきいてたんだけどなあ…。」
「そうそう。「じっちゃん」世界中飛び回ってたからな。日本にいた方が少ないっつの。」
新聞を畳み、机に置く。
月光のもってきた本を一冊取り上げ、ざっと目を通した。
「なんて話きいたかな…、あ、そうそう!」

神のお告げを聞いて箱舟を作り、新たな人間の元となった「神」の話

緑色の光の中に封じられた、破滅の女神を象る「3羽のズキンガラス」の話

数多の運命を握り、一つの時代を終わらせた「運命の女神たち」の話

「印象に残ってるのはこんなもんだったかな…。」
「ていうか、じっちゃんが気にいってたから何回か繰り返して聞かされただろ?」
「そうそうw」
楽しげに二人は笑う。
ついこの間まで、面と向かってそんなことできないと思っていたのに。

破滅を願うズキンガラスは

神にはむかう力を手に入れる

運命の女神にさえ怯まずに

運命は破滅さえも退けるのか

千の郷を見てきた赤き星にさえ

その結末は分からずして――。



追記
「ねぇ、クランケの言う「キング」と、星のいう「じっちゃん」って、同じ人?」
「あれ、ミサキは知らんかったがか?その通りぜよ。…あんまり好んで話すことじゃないんじゃけどな。」

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最終更新:2011年04月12日 23:22