冷鉄交戦
「ごめん!待ったか、凪!」
「いや全然。こっちも今来たところだからw」
「そうか、よかった…;」
息切れする由衣の背を、凪はさすった。
「そんなんでこの後大丈夫か?」
「体力はある方なんだ。大丈夫さ。」
「そっか。ならよかったw」
「態々悪いな、付き合ってもらって。」
「いいんだよ。こっちももうちょっと能力知っておきたかったし。」
「つっても、凪の方が能力者としては先輩だろ?私はまだアースセイバー入ったばかりだしよ;能力の応用も把握できてないんだ;」
「少しずつでもいいだろうけど、最近色々騒がしいからね。」
「…じゃあ、場所は「跡地」でいいか?」
「いいよ。あそこなら思いっきり暴れられる。」
毎日由衣が向かう広い場所に、凪を誘った。
瓦礫の積み重なるそこはひどく足場が悪い。
しかし、しばしば戦場になるそこに慣れておく必要もある。
足場を確かめるように踏みしめ、二人は向き合った。
「手加減なし、でいい?喧嘩とか慣れてないからさ;」
「ああ、分かった。」
ぐっと片足を引き、拳を握って脇をしめる。
風が吹き、小さな瓦礫が落ちた。
カツン、という音を合図に、二人同時に突っ込んだ。
引いた右手に集中し、砂鉄が集まりだして形を成す。
正面を見ると、
同じように凪が右手を引いてこちらに向かってきていた。
二人の違いを上げるならば。
既に凪の右手には「完成した」サーベルが握られていたのだ。
咄嗟に身を引き、突き出された切っ先を避ける。
(形成が速ぇ…。慣れてやがる。流石能力者としての先輩ってか)
左手を地面につき、勢いで回し蹴りあげる。
凪はそれをかわし、僅かに間を開けた。
やっと形を成した剣をしかと握り、正面に構える。
上段に構えられた氷のサーベルが振り下ろされるのを見計らい、こちらは下段から振り上げた。
ぶつかる刃先。暫く競り合っていたが、温度を奪った鉄の剣が氷のサーベルを溶かし折った。
「うわ!」
「あっ!ごめん!;」
「いやいや、大丈夫だよ。」
笑いながら言うも、正直由衣のパワーには驚いていた。
不良はやめたと聞いていたが、普通に生活していて身につくパワーではない。
能力の使い方にまだ戸惑っているものの、力でカバーできるほどだ。
ただ、それは至近距離での話。
手元のサーベルの残骸を消し、十分に間をとる。
小型のナイフを数本作り出すと、勢いをつけて飛ばした。
「ウェ!?;」
反応した由衣はかわしながらも近づこうと試みる。
しかし、足元に撃ち込まれ続けるナイフに、近づくことができない。
遠距離からの攻撃は、パワーが直接伝わるわけではない。
空気中を飛行することで、気圧でエネルギーが削られるからだ。
つまり、現在の由衣には明らかに不利な状況に置かれたのだ。
「っはぁ…マジかよ;」
「油断してると怪我するぞ!」
考える暇も与えぬよう、ナイフを次々と飛ばす。
それをかわし続ける由衣。
それが数分経ってからだった。
由衣は突然後ろに蹴りだし、一層間を開けた。
「!?」
「威力はねえが、仕方ねえ!」
左手に砂鉄が集まる。
形成に時間はかからなかったらしい。直ぐにその左手は前に突き出された。
僅かに光が反射し、こちらに向かってくるそれを避けるのはギリギリのタイミングだった。
背後のビルには、数本の細い針が突き刺さっていた。
「…やっぱうまくいかないか…。」
一人呟く由衣。
いやいや今のは…本気で焦った。
細い針が視界に入っても、簡単には気付けない。
それを知ってか知らずかではあるが、下手をすれば3本ともあたっていた。
感覚的ではあるが、能力の使い方を身につけているではないか。
自然と口角は上を向いていた。
「…剣構えろ、由衣!もう一度接近戦だ!」
「やっとか!いいぜ、勝負だ!」
氷のサーベルを作り出し、構える。
向こうも剣を成型するのを見計らい、地を強く蹴りだした。
「「おおおおおおおおお!!」」
上段突きで、交わるはずだった切っ先。
しかしその切っ先が交わることはなかった。
間に何かが入り込み、双方の剣を素手で取り押さえたのだ。
「「!!??」」
「…はいはいはい、そこまでそこまで!」
剣を放し、血に濡れる手をたたき合わせて声を上げた。
よくよく見ると、話したことこそないものの、由衣にも凪にも面識のある顔だった。
「二人とも危ないなっ。今の剣下手したら二人とも顔にざっくりだったんだから、焦ったよ。」
「お前…「螺良華」、何でこんなところに…;」
「ていうかその手!大丈夫!?」
「うん、全然平気w」
ひらひらさせる手に血の色はなかった。
「なんでっていうか、幹さんに頼まれてここに来たら、行き成り危ない状況に遭遇!?って感じでさ…。」
「幹さん…
幹久朗さんのことか!?」
「そ。最近調子悪いとか何とかであんまり外に出てないみたいでね。代わりに私が見に来たってこと。」
「…ごめん、最初から話が分からないんだけど;」
かくかくしかじかしかくいむ○ぶ…(
「成程な。つまり、アースセイバーに入る前から特訓はしていたと。」
「で、幹久朗さんが協力してくれてたんだけど、最近来てなくってな…。」
「珍しく申し訳なさそうなったんだよねぇ。らしくないっていうか。」
「とにかくありがとうな。いろんな意味で。」
「いいっていいってw」
「…螺良華。」
「ん?何?」
「…もしかして、あんたも能力者なの?」
「どうでしょう?…なんて焦らしても意味ないしね。そうだよ。能力者。」
「初耳だな…;」
「ひどいなぁ、由衣ちゃん!あたしもアースセイバーだよっ!」
腰に手を当て、螺良華は迫った。
「えっ!;」
「ていうか、所属してるグループが丸ごとってかんじ?」
グループが所属してる…なんて話聞いたことないような気がすると由衣は思案しだすが、それを遮るように螺良華が声を上げた。
「それでそれで?まだ特訓するの?あたしも手伝ってあげるよ!」
「え、いいのか?」
「もっちろん!幹さんにもそう頼まれたからね。凪っちも由衣ちゃんも一緒に!」
「助かるよ!ありがとう!」
ビルに向かって歩いていく凪と螺良華の背を見ながら、由衣は考えていた。
「野乃 螺良華」。そんな名前、名簿でみたっけか…と。
最終更新:2011年04月16日 16:21