天ノ川ノ叫ビ~憐ト謝~
面識のある男に呼び出された彼女は、会うなり行き成り頭を下げられた。
普通ならどうして頭を下げているか分からないものだが、彼女には何のことかおおよそ察しがついていた。
だがしかし、あえてその疑問を口にした。
「…なんだよ、行き成り。」
「…君に謝っておかなければならないといけないことがある。」
「この間の月光のことか?色々あったが、最後に助けてくれたのはあんたじゃねぇか。別に気にしてねぇよ。」
「そうじゃない。」
彼は、左目を覆う包帯を指さし、思いきったように告白した。
「…君は、自分の左目を持っていないだろう?」
「!」
「その左目を奪ったのは…僕なんだ。」
彼は告白した。
20年前の真実を。
幼く抵抗できなかった彼女に、命令とはいえメスを入れたのは自分であると。
そして、彼女自身の命は「左目」の媒介になってしまったことを。
「命令に反することのできなかったとはいえ、僕が…君の全てを奪ってしまった。それだけじゃない。嘘の証拠を流し、君を弁護士の座から下ろしたのも僕だ。」
男の告白を、彼女は静かに聞いていた。
憤慨もせず、軽蔑もせず。
「許してくれとは言わない。寧ろ許さないでほしい。僕は…、いつからか道を間違えて、「怪盗」から「犯罪者」に成り下がってしまった…!」
「殺してくれ!最早僕に、まっとうに生きる道はない!ならばいっそ、君に…!」
「…何勝手なこといってるんだよ。」
彼女は初めて、口を開いた。
「全部聞きゃ分かる話じゃねぇか。全部お前の意志じゃねぇ。皆命令されてやったことだ。お前のせいじゃねぇよ。」
「でも…!」
「…お前は言ったな。許さないでほしいと。なら、私は許さない。」
踵を返し、彼女は言った。
「「殺してくれ」と願い乞うなら、私はお前に「生きろ」という。」
「!!」
「もうお前は今までの「クランケ」じゃねぇ。眼の色が違うだろ?」
肩越しに振り向く彼女の顔は、笑っていた。
「もうひとつ命ずるなら、私の前では「千郷」でいろ。そして、また私と話してくれ。」
「「星」…。」
「何分寂しがりなんだ、私は。」
一体どれほどにまで心の広い人間なのだろう。
人間に嫌われ続けた彼女は、自分は人間を嫌うまいとした結果なのだろうか。
…いや、違う。
きっとこれも「キング」の血族としての、心の広さなのだろう。
塵同然の自分を受け入れた笑顔が、あまりにもそっくりなのだから。
だから、彼は自然とこの言葉を口にしていた。
「――ありがとう――!」
追記
――君に伝えておきたい。
ホウオウグループが新たな計画に手をつけた。
そのメインの指揮を執るのは
僕たちの長で
君の祖父。
最終更新:2011年04月17日 13:31