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記憶の端に

記憶の端に

何の前触れもなく春美とキリが事務所に訪れたのを、彼らはためらいもなく歓迎した。
春美は月光に用があることを告げる。
資料の整理をしていた月光は手を止め、奥の部屋から出てきた。

「『東』…?」
「ええ。最近アカノミが呟いているみたいなんです。誰かの例えなんでしょうけど…。」
「戻って来たってことは、以前ここにいたってことか。」
「多分。月光さんや星さんならずっとこのいかせのごれに住んできたのでご存知かと思いまして。」

「『東』の他に何か言ってなかったのか?」
「それらしいことは言ってなかったと思いますが…。」
「…。」
月光が腕を組む。

「ご存じなかったらいいのです。どの道アースセイバーで調べようと思っていましたので。」
「悪いな、私は心当たりがなくってな;でも、私も調べてみる。」
笑顔で星は言った。
「本当ですか?」
「ああ。どうせ暇な浪人だ。」

「…。」
突然、月光が無言で立ち上がった。
「星殿、ちょっとあし、外にいってくるぜよ。」
「え?ああ、わかった。どうした?」
「ちょっとな…。」

閉められた玄関のドアを見ながら、星は呟いていた。
「…あいつ、やっぱり隠し事苦手だな…;」
「えっ?」
「多分あいつ、心当たりがあるよ。『東』とかいうやつに。」
「!」

「な、なら直ぐに追わないと。」
「今追っても直ぐに気付かれる。それに、誰かに会うんだとしたら後ろからついていけば怪しまれるだろ。」
星は部屋へと戻って行った。
「月光からは後で訊いておくよ。隠しても、誘導尋問使えば一発だし。」
「は、はい…。」

芸備線のホームに、彼は一人で立ちつくしていた。
「…本当に、帰って来とるんがか…?」
最後に会ったのはいつだろう。
それだけ前の話なのに、彼のことははっきりと覚えている。

帰って来たのを知り、ホームに走ったはいいが、そもそも何処にいるのか分からない。
それでも彼は、数少ない友人を探すことを決めた。
腰にさした木刀の柄を軽く握り、彼は来た道と反対に走り出した。

記憶の端にあった『東』を

月は追い求める

覚えてなくていい

ただもう一度

その顔を見たいがため

ただそれだけのために

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最終更新:2011年05月01日 12:41