「ありゃ、ここはさっきも通ったな」
いかせのごれについてから早1日あまり。とりあえずの目的地だったいかせのごれ高校にさえ、
霧波 流也は未だ辿りつけてはいなかった。
理由はひとつ。この男、方向感覚が壊滅的におかしいのである。
一人で行動すると、道に迷う、同じ所を堂々巡りするはまだいい方で、最悪の場合来た道を戻ることすらままならない。先天性の病気が原因らしいのだが、当人は気にしていない。「出たとこ勝負、なるようになる」の男である。よく言えば楽観的、悪く言えば投げ遣り。方向音痴についても、「それが現実だ」とすっぱり諦めている。
が、状況は変わらず。
「あーっと、さっきはこっちから来たから……あ、いや、待て、こっちだったか? それともこっちか? やべぇ、本格的に迷ったぞこりゃ」
その事に今気付く辺り、この男も大したものである。さっき赤い髪の少女二人に道を教えてもらったのだが、全く役に立っていない。
「しまったなぁ……月光の奴にでも会えりゃ、案内してもらおうと思ったんだが。ま、そうそう都合よくはいかねぇか」
迷子になった場合の対処法で、一番確実なのは無闇に動かないことだ。……が、それは探している誰かがいればの話。流也の家族や仲間は、あの「白い闇」を名乗る男に崩壊させられてしまっている。
「……ちっ」
嫌な過去に意識が飛び、しかしそれを振り払うでもなく、流也は舌打ちする。否定しても、拒んでも、それが現実だ。それは変わらない。
「目撃情報聞いて飛んで来たはいいが……ここまで広いとな」
流也自身の方向音痴はさておき、確かにいかせのごれは広い。この中でたった一人の人間を探し出すと言う事は、砂漠で一粒の砂金を探すことに等しい。
それは、著しく困難なことに思えた。
「それでも、やらねぇとな。……もう、俺しか残ってねぇんだからよ」
強い口調で呟き、コートの裾を翻してその場を後にした。
―――青い小鳥がその場に到達したのは、それから2分後のことだったとか。
30分後。
「……どこだよここは」
相変わらず、流也は迷っていた。しかも今度は街の中ではない、なんと森の中。地元でも迷う事はあったが、今回はレベルが違う。広い、多い、知らない。
三拍子そろった上に壊滅的な方向感覚、迷わない方がおかしかった。
そもそも、いかせのごれに来て何をしようとしていたのか?
「……………………ありゃ?」
今更のように、流也は自分が何をしようとしていたのか、全く考えていなかったことに気付いた。
ヴァイスがここで目撃されたと聞いて、矢も盾もたまらず飛び出して来ただけだ。
思えば、何をすべきか決めていなければ、行き当たりばったりではどうにもならない。ことに、今回のような場合は。
「……うーむ」
がりがりと頭をかき、周囲を見回す。こう言う時は誰かに相談してみるのが一番なのだが、さて、どこに行って誰に話すべきか? 何にしても、まずはここから出なければ……。
「……………おっ、ありゃ何だ」
巡らせる視線に、一つの建物が留まった。家と言うより小屋、かなり古ぼけた看板。
「ちょうどいい、あそこで道聞いて見るか」
幸い距離は近い上にまっすぐだ、さすがの流也でもこれなら迷わない。ナップサックを背負いなおし、彼はその建物へと歩いて行った。
看板には、こう書かれていた。
クロス・ポイント
(迷い人が見出した先には)
(彼の「友」の居場所が)
(二つの道は、そこで交わる)
(……のか?)
最終更新:2011年05月05日 16:06