アットウィキロゴ

寄り道

時系列は「日常と非日常」と同じくらい、本編から約半年のお話です
※グロ表現に付きご注意ください




ショッピングモールの中を、エミとウミがあるいている
その手には食品の入ったビニール袋。夕飯の買い物に来ていたようだ

2人は、ホウオウグループに籍を置きながらも
マンションの一室を借りて2人暮らしをしていた
生活費などはホウオウグループから援助を貰っての生活
といっても報告などの為、頻繁にグループの基地に顔を出しているので
完全に離れて暮らしているわけではない

ビニール袋と鞄をゆらゆらと揺らしながら、エミは笑顔で提案した

「ねえ、せっかくだから靴見ない?」
「そうね、季節の変わり目だし新しいの欲しいかも」
「今ブーツ欲しいんだ、ねえ行こう?」
「…ちょっと待って」

そう言ってぴたりと立ち止まり、何かを目で追うウミ
「何なに?」とエミもウミの目線を辿る
そこには、3人の男達の歩く姿があった

「良い事でも聞いた?」
「どうかしら、……。」

エミに向き直り、無言のまま見つめる
それなのにエミはふむふむ、と何かを聞いているようなしぐさを見せた

「…なるほど、面白そうね」
「詳しく聞いてみる?」
「そうだね。あ、でもブーツ」
「今買ってたら見失っちゃうわよ」
「むぅ、次来た時には絶対買うからね」
「ええ」

それを聞くと、くすりとも笑わないウミの手を引っ張り
遠くに行ってしまった3人の男達を追い始めた





男達は、ストラウル跡地のある路地裏に来ていた

「やっと帰って来れたなあ、俺らの陣地!」
「長かったなあ、ここから離れてもう二年たってんだよな」
「そうそう。他の場所行ってもいまいちしっくりこなかったし」
「この前別のグループとつるんでたら、ライオンに襲われたもんな」
「ばーか、アレは人間だよ」
「たとえだっつうの」
「人間と言うよりは化け物だったけどな。ああいうのを百獣の王っつーんだろうな」
「ちげえねえ」

晴れやかな表情で語り合う3人

「良く考えてみれば、ここにいるから化け物に襲われるって事も無いんだよな」
「『スト跡地には化け物が住む』って話、気にしすぎたな」
「あのガキと2人の大男、アレくらいでビビるとか今考えたらバカみたいだ」
「あれ、お前一番最初に逃げてなかったっけ?」
「うっせーな、お前こそ女顔だからって油断してたんじゃねえの?」
「お前こそ『何もない所から大男が出て来た』って幻覚見てたじゃねえか」
「あれはホントだっつーの!」
「お前らその話何回目だよ」
「「だってこいつが」」

「ねえ、オニイサン」

「「「!」」」

ふ、と見れば、一人の女の子がそこに立っていた。高校生くらいだろうか
全く気付かなかった男達と、それを見てにっこりと微笑む彼女

「その『女顔の子と大男』の話、詳しく聞かせてくれないかな?」

それを見て二年前の出来事を思い出し、慌てる
リーダー格であろう体格の良い男がぐいっと2人の肩を掴み引き寄せ、会議を始める

「おい、こんなお嬢ちゃん相手にびびってどうすんだよ」
「すまねえ、ちょっとあの日を思い出してな」
「しっかりしてくれよ」
「とにかく、軽くひねって追いだすぞ」
「「おう」」

ばしっと2人の肩を叩くと、それを合図に彼女の方へ向き直り余裕の笑顔を見せた





「作戦会議は終わった?」
「ああ、多数決でお嬢ちゃんを追い出す事になったんだ」
「話も聞かせてくれないの?」
「ああ、悪いけど俺ら忙しいんだよね」
「へえ、感傷に浸るのってそんなに大変なんだ」

相変わらず笑顔でそういう彼女に、笑顔を崩しかける男

「ふざけてると俺ら怒っちゃうよ?」
「ふざけてないわ、ただ知りたいだけ」
「お嬢ちゃん、あんまり舐めてっと痛い目見るぜ?」
「どんな風に?やってみてよ」

一人がリーダー格の男を見れば、男は頷いた
彼女の目の色が変わった事にも気付かないまま

「そりゃあな、こんな風に…」

一人が彼女の腕を掴もうとその手を伸ばした
それを見た瞬間、その手は掴まれ思いっきり捻られる

「いだだだたたあああああ!!ギブギブギブ!!!」

いきなり叫び出す男
彼女の体は決してがっしりしている訳でもなく、標準的な普通の体形だ
そんな彼女に、男を悶絶させるような力を持っているとは思えなかった
彼女が手を離すと、その男は腕を抑えて地面に転がり、そのまま痛みを訴える
動揺する後の2人を見ると、彼女は再び笑った

「ねえ、どんな風に?」

その笑顔は、さっきまでと変わらないはずなのに何かが違った
笑っているのに、目の奥はたとえでもなんでもなく鋭い光があって…

「う、うおおおおおお!!」

様々な感情を振り払うように、体格の良い男が飛びかかる
それに続いてもう一人の男も飛びかかろうとして、踏みとどまる

「遅いよ」

冷たく放たれた言葉と同時に攻撃は難なく避けられて、そのまま後頭部に蹴りが入る
男は「うわ」とも「ぐわ」ともつかないような声を漏らし、いとも簡単に宙に浮いた
そして落下した事を確認すると、彼女はその男を何度も踏みつけた
そのたびに、最初は声帯からの音が低く響いていたが
そのうちめき。だの、ぐちゃ。だのといった鈍い音に変わる

「酷いなあ、私はただ話を聞きたいだけなのに」
「まあ、先に手を出したのはそっちだから正当防衛だよね」

やがて男が物言わぬようになると、飽きたようにそれを蹴り飛ばした

「あーあー、後片付けが大変になっちゃったね」





転がる元人間に、立ち尽くす男は吐き気を覚えた

「あれ、気持ち悪い?」
「…!!」
「その人、オニイサン達のお仲間さんじゃなかったっけ?」
「気味悪がってちゃ可哀想じゃない?好きでこうなったんじゃないのに」
「も、もとはと言えば…!」
「ああ、そうだね。私がやったんだもんね」

からからと笑いながら、男に近付いていく
男は逃げようと後ずさるも、それは叶わない
彼女は勢いを付けて男に接近すると、顔を掴みそのまま持ちあげた

「でも、あなたが助けていればどうなったのかな?」
「もしかしたらこの人はこんな事にならずにすんだかもしれないよ」

答える余裕も無いというように、男はもがき苦しむ
しかし彼女の手から解放される事は無く、更に力は強くなっていく
それをみて、「まあいいや」と呟く彼女

「へえ、あなたの電力ってこんな感じなんだ」

一瞬、「バチッ」という音と主に、男は光に包まれた
電気のようだった。それは彼女の手を伝い、全身を駆け巡った
それを合図に、今まで暴れていた男は動かなくなった
いや、正確には動いている。男の意思とはかかわりなく、びく、びく、と跳ねるように
口からは泡と、ヒュー、という音を噴き始めている

今まで転がっていた男は、仲間達が変わり果てていく姿を眺めていた
そして考えていた。『このままでは殺される』と
死んだふりや逃走したところで、捕まって終わりだろう
今、彼女は自分に背中を見せている、チャンスは今しかない

彼女が掴んでいたものを手放し、地に落としたのと同じ時
彼は、隠し持っていたナイフを手に取り、彼女に突進していった
このままいけば、奇襲は成功していたかもしれない
しかし、彼女はまるでそれを見ていたかのように振り向いた

「!!」

彼のナイフは彼女の腕に刺さる
でも彼女は避けようとする意志も、痛みを訴える様子も全く見せないで、にい、と笑った

「あは、掴まえた」

彼女は彼の腕を掴み、力を込めると「バチッ」という音と共に、彼に光が駆け巡る
さっきの物と、同じだ

彼は尻もちをつく
泡を噴く訳でも、痛みを感じるわけでもない。彼に起きた異常は、「体が動かない事だった」

「すごいすごい、この状況で突っ込んでくるなんて勇気あるねえ」
「どう?攻撃当たって。気持ちよかった?」

腕からナイフを生やしながら彼女は笑う
その結合部からは赤い液体が零れ、水溜まりを作っている
『狂っている』
それと、生きのびるすべはもうないと。それだけは理解できた





「さて、本題に入ろうか」
「二年前、ここで一体何があったのか」

淡々と話す彼女に答えを返そうと口を開こうとする
しかし、喉が痺れてうまく言葉が出てこない

「へえ、女顔の、迷子の少年に会ったんだ」

今まさに彼が考えていた事を、彼女は口にした

「それでケンカを仕掛けて、あら?3対1なのに負けちゃったんだ」
「そのボスがのされちゃって、2人で逃げて。かっこ悪いなあ」
「あっと、今言ったら可哀想かな」

ありえない
あの日の事を、彼女が知っているはずが無いのに
しかも、今まさに考えていた事を彼女は話している

「な、んで」
「なんでわかったかって?オニイサンが教えてくれたんじゃない」

彼女はさも当たり前だとでも言いたげだ
考えてる事がわかるのか?
あのときの男と関わりがあるんだろうか

「ん?逃げる時に2人の大男が“何もない所から”現れた?」
「もしかして女顔の少年ってあの子の事かもなあ」
「ねえ、他には?もっと面白い事教えてよ」

『スト跡地には化け物が住む』
その言葉が頭に響く
もし、ここに戻って来なければ。
最後に彼は、その事を酷く後悔した

パァン

そして乾いた音と共に、彼は事切れた
頭からは、だら、と赤い液体が流れ出る
彼女は、ビルの屋上にいるであろう妹の方を見て、考えた

“ウミ、なんで殺しちゃうのさ”
“彼はもう情報を持っていなかったわ。これ以上やっても時間の無駄なの”
“うーん、やっと面白くなってきたのに”
“それに、いつまで流血してる気なの?”
“へ?うわっ、こんなになってたんだ”

真っ赤な服と水溜まりに、びっくりする彼女

“そんなに驚くなら避ければよかったのに”
“オニイサンへのご褒美だよ、勇気の証”
“もう。今そっちに行くわ、後片づけしなきゃ”

もう一度よくナイフを見てみる
それは赤く染まってはいるものの、特徴的な装飾が施されていてとても分かりやすい

彼女は腕からナイフを引きぬく。一緒に血も出るが気にも留めない
そして、それを水溜まりの中に投げる

「なにやってるの?倒れちゃうわよ」
「ちょっと偶然が起きるか試してみようと思ってね」
「上手くいけば、面白いことになるかもよ?」

そう笑う彼女を呆れたように見ると、ウミは止血の為、鞄から包帯をとりだした
そんな、偶然の日から少し前のお話

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月05日 20:22