とある巨木が寄り添う運命
塗りつぶされた白い闇は
憤りと期待を持って
完全なる快楽を求め
次の舞台を作り出す
灰色の雲が広がる空を見上げながら、僕は怒りを感じていた。
ふらりと立ち寄った一人の男。
僕に寄りかかって呟く言葉はあまりに恐ろしいものだった。
それでも僕が「恐怖」を感じなかったのは、
僕自身が「恐怖」だからだろうか。
浮世歌に何度も聞いた「人を壊す白い闇」。
もしかしたらあの男は、その闇なのかもしれない。
身にまとった黒い衣の中に垣間見えた「白」。
その色に宿っていたのは、決して「光の白」ではなかった。
そろった五方は
均衡を保つため戦い続ける
つけいられないで
確実に白い闇は
この平穏を覆おうとしている
間にあって
守って
何もできない僕らを救って
そう願うしか僕にはできない
遠くからこちらに誰かがかけてくる音がした。
そちらに意識を向けると、僕の友人が手を振ってこちらに向かってきていた。
確か、今日も店にでているはずなんだけど、どうしたんだろう。
妖怪の血の暴走も、起こっていないようだし。
『どうしたの!?』
肩で息を切る友人に僕は声をかけた。
彼は僕を見上げると、端的に言った。
「
アカノミ。人が来るぞ。」
『えっ?』
「月光から連絡があった。お前の聞いている浮世歌を聞きたいそうだ。」
『でも、僕の声は君にしか通じない…。』
「俺が通訳するしかないからここに来たんだ。でも、できるだけ通訳しないように気取られないようにする必要がある。」
『どうして?』
「月光はともかく、ついてくる知り合いは俺たちを妖怪だとは全く知らない。」
『つまり、僕に意思があることさえ知らないってことだね。』
「だからできるだけ難しい比喩表現は使わないでほしい;その場で意訳するのに時間がかかっちゃ怪しまれる。」
さあ、困ったことになった。
「恐怖の具現」とばれないように、それでも早く的確に、友人に浮世歌の内容を伝えなければいけない。
それは僕にとってどれだけ難しいことだろうか。
「…来たな。」
友人が遠くに視線を向けた。
草を踏み分けやってくるのは、主の親戚にあたる木刀術師とくすんだ「色」を持つコートの人
彼を見た時、その強さを本能的に察し、僕は直感した。
――きっと彼が『東』なんだ、と――。
最終更新:2011年05月24日 03:18